第14話
シャロット商会の門を俺は叩いた。
見るからに成金趣味の商会だ。さぞや労働者を食い物にしているのだろう。
門番が胡散臭そうに俺を見た。
「誰だ貴様。ここをシャロット商会と知っているのか?」
「当たり前だ。早くここの商会の長を出せ」
「無礼な! おまえごときチンピラが会えるようなお方ではギャアアアアア!??!?!?!」
俺は門番の腕をねじり切った。そのまま蹴り倒す。
「門が邪魔だな」
門も蹴り倒す。
「な、何者だ!」
「俺は……そうだな、流れの行商人のレイジと名乗っておこう。おまえらに売ってやるものがある」
「何をバカなことを……おまえたち、やっちまえ!」
衛兵どもが俺に殺到してくる。はあ。鬱陶しいハエめ。
俺がやつらに天罰を下そうとしたとき、
「待たれよ!」
一喝した男がいた。白髪の老人だ。
そのおいぼれは俺に近づいてきた。
「……売りたいものだと? 一応、話だけは聞いてやろう」
「ふん、これだ」
俺はミルキが描いた絵を見せた。
男……おそらく商会長は目をすがめて絵を見たあと、笑い出した。
「くくく、愚かな。つかまされたな、贋作を」
「なに?」
「これは確かに腕のいい画家が描いたのかもしれん。だが、贋作だ。聖ニャララエルの模倣だな」
「何を言ってる?」
「商会では貴族か聖人の絵しか買わんよ。どうせ、腕がいいだけの貧乏人に描かせたのだろうが、そんなものに値打ちはない」
「いい絵だろう」
「それがどうした? カネにならなければ、ゴミだ」
「そうか」
俺は商会長の足を切り飛ばした。
「あいえあがあがんごんががなう!??!?!??!?!??!」
「バカ者が。素直にこの商会が沈没するほどのカネを出す。それだけが、おまえが自分の命とこの作品を手に入れられる唯一の道だったというのに」
邪魔なおいぼれを俺は蹴り飛ばした。馬の厩舎の中に足のない商会長が滑り込む。
馬に踏まれて死ね。
「おまえらも殺してやろう。生きていても値打ちのない命だ」
「や、野郎ども! 商会長の仇を討つんだあああああああああああ!」
商会は血に染まった。
「ふう、これで全滅か」
「お疲れ様でした、レイジ様」
アリシアがぺこりと礼をする。
「ああ。……それにしても、ミルキの絵は素晴らしい。売らずに済んでよかったよ」
「はい。それから、ほかの商会も絵の買い取りを拒否しました。どうしますか?」
「まったく、真の才能に気づかぬアホウどもの巣窟だな。もうよい。さっさとダンジョンを攻略して、こんな都市は滅亡させてしまおう」
「それがよろしいかと存じます、レイジ様」
「うむ、ミルキ!」
俺はミルキを呼び掛けた。ミルキが物陰からおずおずと出てくる。
「仇は討ったぞ」
「あ、ありがとうございます……レイジ様。でも、よかったのでしょうか……」
「おまえは自覚した方がいい。おまえには才能がある。それを認めんやつは死んだ方がいいんだ。わかるな?」
「はい、肝に銘じます」
「それでいい。今日から、おまえは俺の仲間だ。一緒に来るか?」
「ぜひ!」
俺はミルキに飛びつくように抱き着かれた。アリシアを見ると肩をすくめている。
やれやれ、人気者はつらいな。
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