第12話


 俺とアリシアはダンジョンに向かっていた。

 だが、大通りを歩いていると、何かざわめきが聞こえてきた。

 男の怒声だ。


「ふん……どうせクズどものいさかいだろう」


 そう思いながらも近づいてみると、男が一人、路傍に座っている少女の胸倉を掴み上げていた。

 まったく……こんなやつばかりだな。


「てめぇ! 俺様の顔をこんな不細工に書きやがって、許せねぇ!」

「う、うう……でも、似顔絵だから……」

「ああ!? 俺が不細工だって言うのか、てめえ!?」


 男が少女を突き飛ばした。少女は椅子やテーブルを跳ね飛ばして地面に転がった。

 どうでもいいが、そばかすに金髪、ジャンパースカートという少女の出で立ちがまた嗜虐心をそそるのではないだろうか。


「殺してやる!」

「おい」


 俺は男を呼び止めた。男は顔を真っ赤にして振り返る。


「ああ? なんだてめぇ、口をはさむんじゃねぇ!」

「見たところ、そっくりのようだがな」


 俺は地面に落ちていた似顔絵描きを拾い上げた。


「ほう……いや、これは才能を感じる一筆だ。貴様、もしや将来の天才画家に描いてもらったのかもしれんぞ? 感謝して地べたに頭でもこすりつけたらどうだ」

「死にてぇようだな……ゴミ虫が!」

「ゴミは貴様だ」


 俺は男の首を掴んでごきんと捻った。即死した男の死体をドブに投げ捨てる。


「おや、元からだいぶ不細工だったようだ。……おい、大丈夫か」


 俺は少女のそばに膝をつき、彼女を助け起こした。


「う、うう……」

「ショックで気を失ったか。アリシア。予定変更だ、宿を取ろう」

「畏まりました、レイジ様」


 俺は少女を抱き上げて、宿へと向かった。

 捨ておくには惜しい才能だ。


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