第10話
道の途中で……
「おい、兄さんたち」
俺たちはいきなり声をかけられた。振り返ると男が立っている。
リザードのコートを着た、無精ひげの男だ。ホームレスにしか見えない。
「ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「なんだ、カネならないぞ」
男は手をごますりながら近寄ってきた。
「いやいや、物乞いじゃないよ。へっへ。よくそう言われるがね」
「早く要件を言え。殺されたいのか?」
「おっと、血の気の多い兄ちゃんだな、いやなに、このへんで『魔王レンピトーを殺した男』を探してるやつらがいてね」
魔王レンピトー。
十八人にいる大魔王の一柱。
それを倒したのはこの俺、レイジだ。
あの激戦は思い出すだけで、心が滾る。
ソロとして俺の最高傑作と言ってもいい、戦闘だった。
当時からアリシアは同行していたが、まだ未熟で戦闘には連れていけなかった。
だからあの戦闘とレンピトーの末路を知っているのは、この世でただ一人。
俺様だけだ。
「……その男を見つけてどうする」
「いやなんでも、そいつがダンジョン都市を一つ亡ぼしたらしくてね。ギルド協会が怒り心頭ってわけさ。必ずそのレンピトーを殺した魔王討伐者を探し出して殺せってお触れが出ててね。へへ、俺はそれを探す探偵ってわけ」
「探偵ね……」
現実の探偵など、こんなものだ。薄汚れた、汚らしい、情報屋に過ぎない。
どうせ浮気調査や、こういう殺人目的の人相探ししか能がないのだろう。
俺は男に生まれて冒険者になれなかったやつは、みんなクズだと思っている。
女とまぐわう価値すらない。
「教えろ。そのお触れはだれが出したんだ」
「え? 決まってるだろ、ギルド協会のトップ、人間王・トールギスさ」
「トールギス……あの男か」
一度だけ会ったことがあるが、確かに俺のような天才を許容できる器のある男には見えなかったな。
所詮は小物のくせに、少し悪戯をしたくらいで処刑命令か。
俺が仕事中にサボっていたら上司に告げ口した同僚くらい心の狭いやつだ。
サボるくらい、仕事のうちだ。やることをやっていれば、サボったっていいのだ。
あいつも殺してやりたかったな。
俺の要領のよさを悪癖として周囲に吹聴したクズ。死ねばいいんだ。
「おい、探偵。教えてやるよ」
「お、情報かい? なんでもいいぜ、教えてくれ」
「魔王レンピトーを殺したのはこの俺だ」
「え……」
「残念だったな、おまえはここで死ね」
俺は探偵の首をはね飛ばした。
鮮血がポンプのように跳ねあがる。
返り血を浴びるが、すぐに『清潔』魔法で復元させた。
男の血など臭くてたまらないからな。
「バカが。俺のオーラに気づかず近寄るからこうなる」
「レイジ様……とても悲しい話を聞いてしまいましたね。まさかトールギスごときがあなた様のお命を狙っているとは……」
「構わんさ。目的地が決まっただけだ」
俺はぺっとつばを吐き捨てた。
「ギルド協会長・人間王・トールギスを抹殺する。やつには、生まれてきたことを後悔させてやる……」
俺に歯向かうものは、たとえ俗世の王であろうと、許しはしない!
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