第9話


 次の都市に着く前に、行商人のキャラバンが全滅しているのを見かけた。

 見ると、何か大きなケモノに食い荒らされたらしい。

 生き残りはいなかった。連れていたらしい牛が真っ二つに食いちぎられている。


「ひどい……魔物の仕業でしょうか」

「おそらくな。金目のものがないか探してみよう」


 あさってみると、業物の太刀があった。ふふん、使ってみるか。

 俺の剣は愛用こそしているが無銘の剣。そろそろ交換してもよいころだ。


「死して俺の役に立つとはな、褒めてやるぞ、虫けらども」

「どうします、レイジ様」

「ん? どうとは?」

「このあたりの魔物を掃討すれば、レイジ様のご高名もさらに増すことかと」

「ふむ……そうだな。たまには善行でも積んでおくか」


 俺とアリシアは周辺を調べ、魔物の追跡を開始した。

 森深く、その奥に、洞窟があった。


「ここのようだな……魔物の匂いがする」

「レイジ様、お気をつけて」

「心配するな。俺は人間にも魔物にも強い」


 中に入ると、グリフォンが甲高い声で鳴いていた。

 怪我をしている。矢傷だ。キャラバンの人間に逆襲されたのだろう。


「ふむ……どうやら出産直後のグリフォンだが、子供の姿がない。おおかた盗まれて激昂し、人間を襲い始めたのだろう」

「いかがしますか?」

「あの反抗的な目を見ろアリシア。俺になつくとは思えん。バカで下等なケダモノだよ。俺に忠誠を誓えば乗り物くらいにはしてやるのにな」

「本当ですね、レイジ様」

「ああ。では、始末しよう」


 グリフォンは激しく抵抗したが、拾った俺の太刀による斬首であっけなくその命を終えた。


「ケダモノにふさわしい末路だな」

「はい。やはりこの世界は我々のような上位種が支配するべきです」

「うむ。アリシアも最近は世の中のコトワリがわかってきたようだな」

「恐縮です、レイジ様」

「さ、いこう。善行などするものではないな。ケモノくさい匂いがついてしまった」


 俺たちは血臭のする洞窟をあとにした。


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