第5話
翌朝。
俺は目を覚まし、隣で眠っているアリシアを見た。
「アリシア、朝だぞ」
「う、ううん……」
「ふっ、もう少し寝かせておいてやるか」
昨夜はお愉しみだったからな。
俺は素っ裸のまま宿の窓の前に立ち、混乱のまま眠れぬ一夜を過ごした都市を眺めた。
ダンジョン崩落の救出作業はうまくいっていないらしく、泣き崩れている家族が大勢いる。
だが、それもこれも、俺をコケにしたギルド長が悪いのだ。
そのような者を選挙で選んでしまった住民にも、罪がないとは言い切れまい?
当然の報いである。
「レイジ様……」
「おう、起きたかアリシア。もう朝だぞ。気持ちのいい朝だ」
「はい……すみません、すぐに支度をします」
「ゆっくりでいいさ。旅は長い」
さすがに俺たちは服を着て、テーブルに地図を広げる。
「この都市にはだいぶ長いこといましたね。次はどうされますか?」
「うむ。俺の考えでは、俺のような魔王討伐者(グランドマスター)を蔑視する傾向がギルドにはあるようだ。各地の都市を周り、そのような軽挙妄動が見受けられた場合は殲滅するのがよいと思う」
「そうですね。魔王を倒し、平和を築いたレイジ様への暴言……許せることではありません」
「そうだろう。俺のおかげで、この大陸は滅亡を免れたのだからな」
魔王レンピトー。
俺がやつを倒したのは三年前。
俺は、誰にも協力してもらえず、ソロでやつを倒した。
当然、目撃者はおらず、履歴も残らず、俺は当時はBランク冒険者から昇格もさせてもらえなかった。
確かにまぎれもなく、魔王を討伐したのに、だ。
目撃者がいない。そんなくだらない理由で、俺の功績は無にされた。
俺が誰よりも強く、謙虚で、細心の注意を払って魔王を討伐したにも関わらずだ。
許せることではない。
もう俺は、人間を許すのはやめにした。
この三年間でよくわかった。
「アリシア。人間というのはとても愚かな種族だ。滅亡させた方がいいのかもしれん」
「では、それをお決めになる旅になさってはいかがでしょう」
「うむ……そうだな。やはりアリシア、君は聡明だ」
「レイジ様、照れてしまいます。おやめください」
「ふふ。君に出会えたことだけが、俺の人生で華やかだったことだ……」
俺はアリシアの頬を撫でた。
まだ喧騒の中にいる愚民どもを眺めながら、テラスで朝食を取り、俺たちはその愚かな都市を後にした。
あとで聞いた話では、それからまもなくして滅亡したという。
愚かな発言は身を亡ぼす、ということだな。
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