第3話 転
中庭に面した窓ガラスをガラリと開けたのは、衣冠姿の二本足で歩く白兎であった。
「よいしょっ。と」
「おやぁ。まだ、そんな物を着けていらっしゃったのですか。どうか、その穢らわしい物は,早くお脱ぎくださいませ」
白兎は、近づいて来る茅利が、ストッキングを履いている事に気が付き、顔をくしゃくしゃにした。
「まぁ、お待ちなさい。全て脱がさせるわけにはいかないでしょう。それとも、何? 私のここを、この人達に穢されても良かったの?」
白兎は、ブルブルブルと小刻みに顔を横に振り、茅利がストッキングとパンティーを脱ぐのを待った。
中庭には、背中に駕籠を担いだ巨大な
「本当に良おございました。よくぞまあ、御身清らかなまま、なるべく姿におなり下さいました」
白兎が、風呂敷の中から銀紗の衣を取り出して、茅利の肩に被せると、それは自然に茅利の身を包んだ。
館主は、生物のいる惑星の監視をする宮には、自身の子供を宮主として住まわせ、惑星という文字や銀河というページの治め方を学ばせていた。そして、地球での1900年代に、
本主は、
「私は、本主となったので、この宮から去らなければなりません。
と、白兎の代官──嵐海宿禰に告げて去った。
直輝は、衝動にかられて美奈代を穢したわけでは無かった。
1999年7月。彼は、雨粒に紛れた本主の子供の種を飲み込み、本主の子供の種は、自身が育つ母体に向けて、直輝に自分を植え付けさせたのだった。
「嗚呼。本当にお美しゅうございます。交信でも申し上げましたが、貴女様だけが、月の海の水源を濁らす事なく、御育ち下さったのでございます。貴女様の他にも、三人もの御子が生まれになられ、皆、蝶よ、花よ、と育てられましたものを、嘆かわしくも、自ら汚染物とまぐわい、月の海を潤わす為の源流の
「ふふっ。私が、こうして水源を守ってこれたのは、全て、美嘉様のお陰なの。…あら? そういえば、美嘉様は? 美嘉様はどうしたのかしら?」
茅利は、キョロキョロと周囲を見回した。
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