カゾクをつくるマホウの国
ここはフシギなマホウの国。
ウネウネうごくドロと、キラキラ輝く砂があるマホウの国。
広場にはカワイイおひめさまとケライたち、そしてたくさんの人がいました。
広場にあつまった人たちと、とんがり帽子の三兄弟は、ドロと砂をこねてなにかをつくっています。
こねこね、ぺたぺた。
一番大きなお兄さんはお父さんのカオを、真ん中のお兄さんはカラダを、末っ子は手と足をつくりました。
ほかの人たちもいろんなカゾクを作っています。
足がほそいお姉さん、カオが小さいお母さん、いろいろなカゾクがいました。
カワイイおひめさまにはカゾクがいませんでした。
おいしいゴハンを食べても、たのしいオモチャであそんでも、おひめさまはずっと寂しいままでした。
だからみんなにカゾクをつくってもらっているのです。
お日さまが一番高くなったころ、みんなのカゾクができあがりました。
おひめさまはみんなのカゾクを見てまわります。
「キレイじゃないわ」
カオが小さなお母さんはバツをつけられました。
「こんなのじゃいっしょに歩けない」
足がほそいお姉さんもバツをつけられました。
「あたしは、あたしのお父さんがほしかったの!」
とんがり帽子の三兄弟は、三人のお父さんをつくってしまったのでおこられてしまいました。
「これよ! これこそお父さんよ!」
そこにはとても大きくて、とてもつよそうなお父さんがいました。
とんがり帽子の三兄弟のお父さんよりもすごくりっぱです。
おひめさまは大きくてつよそうなお父さんにマルをつけました。
大きくてつよそうなお父さんをつくった人は、とてもりっぱな帽子をもらいました。
これでツヨイお父さんはおひめさまのお父さんです。
大きなお父さんお父さんなので、しごとをします。
ぐしゃぐしゃ。
ツヨイお父さんはカオが小さいお母さんをつぶしてしまいました。
なぜならバツをつけられてたからです。
べしゃべしゃ、どすんどすん。
つぎにお父さんは足がほそいお姉さんをつぶしました。
だってバツをつけられてたからです。
「お願い、やめて、お父さん!」
おひめさまはツヨイお父さんを止めようとしますが、お父さんは止まりません。
広場にあつまったカゾクをドンドンつぶしてしまいます。
だってこのツヨイお父さんはツヨイことしかできないからです。
おひめさまが大声で止めてもお父さんは止まりません。
そのうち、しごとのジャマだからおひめさまを叩いてしまいます。
お父さんに叩かれたおひめさまは泣いてしまいます。
ツヨイお父さんはもういちどおひめさまを叩こうとします。
だってツヨイお父さんはこれしかしらないのです。
おひめさまを守ろうと、ケライのみんながおひめさまを守ります。
だけど大きくてツヨイお父さんはケライのみんなをどかします。
さいごにとんがり帽子の三兄弟がツヨイお父さんを止めようとします。
一番大きなお兄さんがハサミでお父さんとたたかいます。
チョキン、チョキン。
ドロと砂でつくられたお父さんにハサミはききませんでした。
一番大きなお兄さんはたたかれてたおれてしまいます。
ぽかん、ぽかん。
真ん中のお兄さんがタテで末っ子とおひめさまを守ります。
いくら叩いてもダメなので、ツヨイお父さんは真ん中のお兄さんをつまんでとおくになげてしまいます。
さいごに末っ子がとめようとしますが、末っ子とおひめさまを守るように、三人がつくったやさしいお父さんがかばいます。
べしん、べしん。
やさしいお父さんはツヨイお父さんに叩かれて手がとれてしまいました。
だけどやさしいお父さんはふたりを守ります。
ばしん、ばしん。
こんどはカラダにヒビがはいってしまいました。
けれでもお父さんはふたりを守ります。
ポキッ。
やさしいお父さんはカラダがふたつに折れてしまいました。
それでもお父さんはふたりを守ります。
ツヨイお父さんはやさしいお父さんをふみつぶそうとします。
いままでずっと守られてきたおひめさまは、やさしいお父さんをかばいます。
「お願い、お父さんをイジメないで!」
おひめさまのコトバをきいて、ツヨイお父さんのうごきがとまり、ドロと砂に戻ってしまいました。
ツヨイお父さんはお父さんではなくなったのです。
だからまたドロと砂になってしまったのです。
はんぶんになったやさしいお父さんは、守ってくれたおひめさまのアタマをなでました。
おひめさまはやさしいお父さんができてまんぞくでした。
だけどはんぶんになったお父さんは、ドロと砂になってしまいました。
はんぶんだけでは、お父さんとしていられなかったからです。
おひめさまはワンワンと泣いてしまいました。
ここはフシギなマホウの国、カゾクがつくれるマホウの国。
とんがり帽子の三兄弟はお父さんをさがしに、また旅にでます。
おひめさまはまたやさしいお父さんをつくってほしいとおねがいします。
だけど三人はおひめさまのおねがいをことわりました。
おひめさまを守ってくれたおやさしい父さんはもういないのです。
あたらしいお父さんをつくっても、それはちがうお父さんなのです。
だからお父さんもお母さんも、そして子どももだいじにしないといけないのです。
おひめさまはまた泣いてしまいました。
またひとりさみしい毎日がきてしまうことがかなしいからです。
末っ子はそんなおひめさまとゆびきりでやくそくします。
旅がおわったら、ぼくがやさしいお父さんになってかえってくることを。
おひめさまは、泣きながらうなずきました。
おひめさまに見おくられながら、とんがり帽子の三兄弟はお父さんをさがすために、今日もどこかを歩いています。
カゾクをつくる国のおひめさまは、末っ子がかえってくる日を、ずっとずっとまちつづけています。
なんにちたって、なんねんたっても、おひめさまはずっとまっています。
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