*
家に戻ると、すぐにシャワーを浴びた。
辻の香りと唾液と自分の汗まみれになった身体を丁寧に洗い流して、着ていた服を全部突っ込んで洗濯機を回した。やっと解放された、そんな気持ちで炭酸水を飲んでスマートフォンを開くと、あっという間に爽やかな気持ちは粉々になった。
「もう会いたい 初めてなんだ、こんな気持ち」
辻からの着信メールは、彼の選んだ言葉ひとつひとつが忌々しく感じた。暗い沼に引きずり込まれるような悪い感覚に、一人思い切り首を横に振る。私はベッドにスマートフォンを投げつけた。
あんなに可愛く見えて迷わず食べてしまおうと思わせてくれたのに、今度はどうしてこんなにも鬱陶しいのだろう。
シャワーを念入りに浴びたのに、辻のまとっていた香りの記憶は消えなくて、鼻の粘膜にこびりついたかのように強く残っている。香りが蘇るたび、自分の隙間を何度となく埋めた辻の感触を思い出し鳥肌が立った。
とにかくもう、眠ってしまおう。
私はベッドに潜り込んで目を閉じた。
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