*

気がつくと、広いベッドの真ん中を占領してすっかり眠ってしまっていたようだった。ベッドの隅に座り、壁にもたれて腕組みしている辻と目が合う。

「起きた?」

辻は甘い声で小さく囁いた。一体どのくらい、眠ってしまっていたのだろう。その間、辻は私をずっと見つめていたのだろうか。働かない頭で辻を見つめる。

しっかり布団にくるまっているものの、何も身につけていないわ、酔いは醒めてしまっているわで何だか気恥ずかしかった。部屋の明るさは、昨夜と何も変わらないけれどおそらく朝になっているだろう。酔っていたせいで随分と大胆なことを辻に要求した気がする。けれど何もかも記憶が断片的で、ちゃんと避妊したのかすらあやふやだった。

ちゃっかりTシャツとトランクスを身につけている辻は、ズズズ、と音を立て布団に潜り込んできて私の口元に、唇を押し付けた。ほんの少し舌を入れられ私は仕方なくそれを受け入れる。

シトラス系の香水の香りをプンプンさせながらピッタリと身体を寄せてくる辻は、私の耳元に甘ったるい声で「俺ら、結局、何回やったんだ?」と、囁いた。

「多分…4回?」

面倒臭くて適当に答えた。なんとなく4回くらいだった気がした。辻は、ちっともうまくできないくせに高校生みたいに元気で繰り返し何度もやりたがった。誘ったのは私だし、仕方なく付き合いながらも、遠慮なく色んな事をしてもらった私はすっかり疲れて眠ってしまった。

身体は震えるほど感じているのに、心はずっと冷めたままだった。どうしてキュンとできないのだろう、そう思えば思うほど、最初は気にならなかった辻の香水の香りが鼻について嫌悪感でのぼせそうだった。


辻の指が触れた私の胸が反応している。

嬉しそうに辻が微笑んで、敏感になった胸に口元を寄せていく。

「あぁ、ねぇ、もうやめよ…あぁ…。」

私がどうすれば喜ぶのかを、頭の良い辻は一晩で理解してしまったらしい。言葉とは裏腹に、あっという間にすっかり湿り気を帯びた私の中に辻の指が滑り込んでくる。

頭をいい子いい子する長い指、愛おしそうに唇を塞ぐ唇、いやらしい音を立て胸の上を行ったり来たり這う舌の感触。

全部がたまらなくなり私が思わず声を漏らすと、

「めちゃくちゃ可愛い。」と辻が耳元で囁いた。

ねじ込まれるきつい感覚と、激しく揺さぶられ、にわかに訪れる浮遊感。

辻は私を飛び越えて、私との行為に夢中になってしまったようだった。

結局、何回したのだろう。

私達がチェックアウトしたのは、その日の15時過ぎだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る