*
「うわ、思ったよりも狭い。」
ソファとベッドと大きなテレビで埋め尽くされたホテルの部屋に、私はふらふらと足を踏み入れる。
ソファになだれ込み、「飲みすぎたぁ。」と大きく息を吐いた。目の前の辻を見上げると、困ったような顔をして立ち尽くしている。私が辻をタクシーに押し込み、ラブホテルが密集したエリアを口にした途端、彼はすっかり無口になってしまったのだ。
「どうしたのー?座ってぇ。」
私は辻の手を引っ張り無理やり隣に座らせた。
そしてそのまま、自分の胸に辻の手をのせてみる。驚いた辻の顔が可愛くて思わず笑ってしまった。辻はその手を動かそうともせず、目を見開いたまま私を見つめる。私はそのまま辻の唇に自分の唇を軽く重ねた。
「いつかの仕返し。」
私が言うと、彼は硬い表情のまま「お前と、こんな関係になるなんて…。」と、ポツリと言った。
さっきまでの饒舌な辻はどこへ行ってしまったのやら。全然緊張が解けない辻が、なんだか可哀想で私は彼の頭を撫でた。
「怖いの?」
「怖い。」
硬そうに見えるのに意外にも猫っ毛で柔らかい髪に静かに驚きながら、私はもう一度キスをする。
彼のキスの仕方は、あの頃から全く進化していなかった。舌を絡めてみても応答の全くない一方通行な味気ないキス。これじゃあ何も盛り上がらない。仕方なく諦めて唇を離し、彼の手を自分の服の中へ滑らせてブラジャー越しに胸を触らせてみる。するとちょっとだけ嬉ししうに笑って「大きい。」と、辻が呟いた。
「矢沢、おっぱい大きいよね。」
「そうだよ。もっと触りたいでしょう?」
私が言うと、辻が頷いた。
「ベッド行こう。」
私は辻の手を取って目の前のベッドに移動した。全然見えないのはつまらないから、ちょうど良く薄暗くなるよう灯りを調整していると辻がポツリと言った。
「俺、どうしたらいいかよく分からないんだけど。」
「え?」
振り向くと、少しだけ緊張のほぐれた様子の辻が無邪気な顔でこちらを見ている。
「まさか初めて?」
「いや…。あ、うーん…。初めてではないんだけど…。あんまり?というか久しぶりというか…。」
要するに数回しかしたことがないのだろう。
私はそれ以上、何か聞くのはやめて代わりに服を脱いだ。きっとブラジャーのホックだって外せないだろうと思ったから自分で外した。辻の目線が釘付けになったのを確認してから彼の両の手を再び自分の胸の上に乗せた。
「触って。」
しばらく恐々触っていたその手は、そのうちそれなりの触り方に自然と変わっていった。思わず小さな声が出て、たまらなくなった私は彼にまたキスをする。今度はなんとかキスも一方通行じゃなくなり、下手くそながら彼も舌で応えてくる。
試しに彼の太ももの間に手を滑らせてみると、思った以上の手応えがあった。私はしめしめと心の中でほくそ笑む。
「気持ち良くしてあげる。」
私がベルトに手をかけると「え、いいの?」と辻はびっくりして動きを止めた。
「当たり前でしょう?」
まったくどんなセックスしてきたんだよ。顔も知らない彼の元彼女に呆れながら、私は辻のズボンを引きずり下ろした。私が顔を埋めると、辻は恥ずかしそうに小さなうめき声をあげた。
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