第2話:大樹を見上げる

飲み会が深夜まで行われた次の日。

太陽は真上に上り、空には雲一つなく、涼しい風が島に流れていた。


リンボーヒー樹の周りには、総勢800人を超える隊員が集まっている。

すでに先遣隊が樹上に登り始めており、下にいる部隊は昼寝したり、昼食の準備を始めていた。


海岸近くの岩の上に寝転がるレアリィの元に、ひとりのヒゲ面の男が駆け付ける。

男は、レアリィの前で膝を着き、頭を下げた。


「レアリィ総大将!知将ハテナ、各部隊の現状を確認してまいりました!すぐにご報告いたします!」ハテナ

「おお、ハテナ。そろそろどこかの先遣隊が登り切った頃じゃないか?」レアリィ

「はい!海岸側の4部隊以外、先遣隊により綱が下ろされたそうです!各部隊、昼食後に登り始めるとのこと!」ハテナ

「ふふふ。先遣隊にいるのは、かぎ爪があれば塔すらも登れる達人ばかり。距離があるとはいえ、彼らが木登りに手を焼くことはないさ」レアリィ


レアリィは立ち上がり、服に着いた砂を払う。

彼が上を向くと、同じく立ち上がったハテナもつられるように頭上を見上げた。


海岸の上では、巨大な樹から伸びる枝と葉が、空を覆い尽くしていた。

暖かい光も、地上に辿り着くころには、日陰のような弱い光になっている。


「大きいですね。このハテナが子供の頃は、まだ村の半分ほどしか浸食されていませんでした。しかし今は、島全体を覆い尽くそうとしている。恐るべき成長ですよ、まったく」ハテナ

「知将ハテナよ。君も巨大樹が自然発生したと思うか?」レアリィ

「は?まあ、人為的なものではないとは思いますが」ハテナ


ハテナの答えを聞き、レアリィはふっと笑う。


「実は、僕の祖先が面白い話を残していてね。その中に、異常気象を引き起こすという、呪いの話があるんだ。他にも言い伝えの中に、悪魔や巨大な芽の話も出てくるというのがまた面白い」レアリィ

「まるで、今の状況を予言しているかのようですな」ハテナ

「リンボーヒー樹がここまで巨大になったのは、悪魔の仕業さ。大樹の上に住んでいる悪魔が、世界を滅亡させるために樹を育てているのだ。僕たち島民は、島に災厄をもたらす悪魔と戦わなければならない」レアリィ


拳を掲げ、わざとらしく棒読みで、レアリィは悪魔討伐の意義を語る。


「ふっ。それが英雄レアリィ団への筋書きというわけですか」ハテナ

「はっはっは!わかってるじゃないか知将!そうさっ。これは祖先の話と、現実の異常気象と、先月捕まえた妖精の証言から思いついた、僕の作り話!だが、僕が悪魔を討伐したとき、この話は真実として世間に伝わるだろう!」レアリィ

「この知将ハテナ、どこまでもお供いたします」ハテナ

「まずは食事だ。午後には、ハードな運動が控えているからね」レアリィ


ふたりの男は、野外料理を受け取りに向かう。

間もなく、樹上への進行が始まろうとしている!

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