4章 築け伝説!~デスリンボーと孤独~
第1話:リンボーヒールで盛り上がる
絶海の孤島を覆い尽くすようにそびえ立つ巨大樹、リンボーヒー樹。
そんな木の内側に、リンボーヒール村は存在していた!
木材でできたある大部屋の中で、屈強そうな男女たちが酒盛りをしている。
人数は、男女合わせて約20名。
酒盛り会場の中心では、室内の雰囲気には似つかわしくない、高潔な身だしなみの青年が場を盛り上げていた。
「各部隊長の諸君!我々の栄光は目の前にある!悪魔を討てば、君たちは英雄のひとりとして、世界中で持てはやされる!無論、大きな功績をあげたものには、僕からも追加報酬を出そう!間もなく、英雄レアリィ団の出陣のときだっ!」レアリィ
「いいぞー!レアリィ御曹司ーっ!」各隊長
「ふっふっふ……!今は総大将と呼びたまえ」レアリィ
演説を終えたレアリィは、グラスのぶどう酒を口に含む。
その時、ひとりの美しい女性が会場へと入ってきた。
訪問者を見た部隊長たちは、次々に口を閉ざしていく。
祭りのような騒ぎの大広間が、あっという間に静まり返る。
その女性は、レアリィと同じような意匠の衣服を身にまとっており、手には血の付いたサーベルが握られていた。
ドレスの半身は血で濡れている。
彼女自身にケガはなく、血の付き方も外側から付いたものである。
女性に気が付いたレアリィは、嬉しそうな表情で立ち上がった!
「ラディ!進展があったのか!?」レアリィ
「ええお兄様。先月捕まえた妖精、とても強情だったけど新しい情報を話したわ。どうやら、樹上の悪魔よりも、地下の悪魔の方がはるかに強く恐ろしいらしいの。この私よりも恐ろしいですって……」ラディ
サーベルを持ったままの状態で、ラディの手が震えはじめ、彼女はもう片方の手で震える腕を押さえつけている。
その瞳は、目の前にいる兄の胸元を見据えている。
そんな妹を見て、レアリィは顔を青くする。
何歩かラディから距離をとった後、青年は話を続けた。
「そ、そうか。僕の元に直接来たということは、なにか作戦に関するお願いがあるというわけだね?」レアリィ
「そうよ……。地下に眠るという悪魔は、私の部隊に任せてほしいの。掘削作業で、力も体力も兼ね備えた部隊になったわ。悪魔を絶望させるには十分」ラディ
「別行動という訳か。オーケー。じゃあ僕たちは掘削作業を待つことなく、もう樹上の悪魔を討ってしまうよ?」レアリィ
「ええ。掘削作業もかなり深くまで進んだわ。今からリンボーヒー樹に登れば、同時に悪魔を討てるかもね。うふふふ……」ラディ
ラディは不気味な笑みを浮かべ、青年に背を向ける。
大部屋から去ろうとする妹を、レアリィが呼び止めた。
「その前にラディ。その服の血……やけに量が多いね。あの小さな妖精から、そんなに血が流れるものなのかい?」レアリィ
「やだわお兄様。妖精から血なんて出ないわよ。血が足りないから、逃げようとした裏切り者で遊んでいただけよ」ラディ
「……君の部隊のやり方に口を出す気はないが、こちらに来るときは着替えてくれ。この場を見れば、みなの士気が下がっているのがわかるだろう?」レアリィ
「わかるわ。私はこの空気が好きだもの。ではまた会いましょうお兄様」ラディ
足音一つ立てることなく、ラディは大広間を去った。
しばらくして、会場は再びにぎやかさを取り戻していく。
会場での話題の中心となっているのは、もっぱら先ほどやってきたラディについての話である。
「さっきのが噂のラディ総大将か。別動隊全てを指揮してるっていう。思ったよりもかわいいじゃん」部隊長A
「レアリィ総大将の妹君だからなー。知ってるか?総大将の一族はみんな美形なんだぜ。あんな性格だけど、優しくしてあげれば向こうも……」部隊長B
「やめておくがいいだわよ。ラディ総大将はとある暗殺術を極め、血と共に生きているお方。あなたでは、初日でお心臓を貫かれるのだわ」部隊長C
「その頼もしい妹は、樹上の戦いには参加できなくなった。各部隊長は、明日の木登りに備え、飲み過ぎないように注意したまえ!」レアリィ
「おーっ!」各部隊長
レアリィ率いる、英雄レアリィ団の飲み会は深夜にまで続いた。
そして、あっという間に夜が明けた!
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