第4話:またも敗北!悪魔デスリンボー

ヒラサメの一撃により、デスリンボーは討たれた。

少年はひとまず、妹の仇を取ることに成功したのだ!


海底火山の近くで、海中の空を見上げるヒラサメ。

妹を失った少年の、敵討ちは成就した。

少年の目からは、涙が流れている。


そんな少年の背後に、音もなく忍び寄る影があった。


海の女神、ソーリーだ!

彼女は、柄のきれいな女神の剣を手に、海中に漂うヒラサメの背後に立った。

手を伸ばせば、触れることのできる間合い。

それほどの至近距離から、ヒラサメの首元目掛けて、女神の剣を突き立てる!


だが!

女神の剣が届くよりも前に、ヒラサメが後ろを向いた!

振り向きざまに、手刀を、女神の剣に向かって放っていた!


水の刃だ!

金属よりも鋭く圧縮された水が、女神の剣を迎え撃つ!

剣は、剣先から柄にかけて、真っ二つに切断されてしまう!


剣を握っていたソーリーは、腕から肩へと、水の刃による攻撃を受けてしまうが、すぐに傷が再生していく。


「ぐっ!貴様っ」ソーリー

「海の女神っ……いやソーリー!僕はっ、僕は……僕は、信じたくなかったぞっ!欲望の悪魔の言葉など!お前が僕を、村のみんなを騙しているなんて、信じたくはなかったのに……!」ヒラサメ

「ちぃっ!」ソーリー


ソーリーは後ろに飛び退き、振り返って、海底に向かって猛スピードで移動する。

だが、間もなく彼女の動きは止まった。

ヒラサメがすぐに回り込み、悪魔の行く手を遮ったのだ!


「お前の持つ、角に翼!形は違うけど、欲望の悪魔にもあったものだ!ソーリー!お前も悪魔だというならば、僕の手で討ち取らせてもらう!」ヒラサメ

「なんだと?貴様っ、誰が、誰を倒すだって?おい……!人間風情が、あまり図に乗るなよっ!」ソーリー


ソーリーの体から、怒りのエネルギーが溢れ出てくる!

ヒラサメも、彼女の発する怒りに、覆われてしまう!

海底火山の周辺が、神殿と同じように、怒りで満たされた!


神殿の時と違うのは、ヒラサメの体に震えがなかったことだ。

怒りの力を前に、平然とした様子で構えている。

少年に隙はない!

相手が悪魔であろうと、一歩も引くことはない!


「ソーリー!お前のやったことをすべて吐き晒せ!どこまでがお前の仕業で、どんな悪事を働いたのかっ!お前のすべてを明かしてみろっ!」ヒラサメ

「ふふふふははは……。どこまでが私の仕業かだと?……すべてだ。

リンボーヒール村を海に沈めたのは私。

海の女神として、村を陰で支配していたのも私。

何度も子どもをたぶらかし、デスリンボー討伐に向かわせている。

最後には、必ず正体を明かして、極上の怒りを手にするのだ。

丈夫な海の民は、不意打ちしても即死しないから、いい獲物だった。


だが、貴様たちは強くなり過ぎた。

私の駒として、エサとして、不相応な力を得てしまった。

ついに私に牙をむいた今、貴様たちを生かしておく道理などない。

貴様たちは、私の手によって、部族としての終わりを迎える!


海の民は!

誕生から、終焉に至るすべてを!

私の都合のためだけに、生きるのだ!」ソーリー

「それだけか!?僕の妹を襲わせたのも、お前だろう!」ヒラサメ

「ああそうだ。貴様の怒りを引き出すためにな。100年間、村で女神を演じてきたのだ。貴様たちに怒りを宿らせる方法は、熟知している」ソーリー

「このっ、悪魔がぁっ!」ヒラサメ


ヒラサメが、目の前にいるソーリーに飛びかかる。

少年は拳を振り上げ、悪魔の体を撃ち抜いた!


ソーリーの胴体に、圧縮された水の砲弾と、ヒラサメ自身の拳が命中する。

そう、少年の目前にいるソーリーには、命中した。

攻撃は当たっていたのだ。

その瞬間、悪魔の体は不自然に歪み、少年の前から消えてしまった!


幻覚だ!

ソーリーは、ソーリーではなかった!

ヒラサメが話していたのは、ソーリーの姿をした幻覚だったのだ!


「ぐあっ!」ソーリー


ヒラサメのいる場所よりも深い位置で、悪魔の短い悲鳴が上がる。


ヒラサメが、声の位置に目を向けると、海底火山のすぐそばで、ソーリーが水の砲弾に撃ち抜かれていた!


ヒラサメに幻覚を見せた後、ソーリーは海底火山に向かって、まっすぐ逃げていた。

しかし、先ほどヒラサメが放った水の砲弾が、ソーリーの幻覚を貫いた後、本物のソーリーをも貫いてしまったのだ!


ヒラサメは、ソーリーに向かって、猛スピードで突っ込んでいく!

そのまま、動きの止まったソーリー目掛け、再び拳を繰り出した!


「今度こそ覚悟しろっ!ソーリィーーーっ!」ヒラサメ

「くっ!舐めるなああぁっ!」ソーリー


悪魔もついに攻撃を繰り出す!

振り返ったソーリーは、突っ込んでくる少年に向かって、両手の鋭い爪を突きつけた!


ヒラサメの拳と、ソーリーの両爪が激突する!

ソーリーの爪は、少年の拳から放たれた水圧とぶつかり合い、水の塊を打ち破る!

しかし、ヒラサメの拳を受け止めきることはできず、爪はひしゃげ、腕は砕け、胴体に拳をねじ込まれてしまう!


海の民ヒラサメの一撃が、ソーリーの攻撃を上回ったのだ!


後から発生した衝撃波によって、ソーリーの体は吹き飛ばされてしまい、海水と共に、海底火山へと叩き込まれてしまうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る