第4話:初の敗北!悪魔デスリンボー

ソーリーによる拳の一撃が、デスリンボーの煙のような体を貫いた!


欲望の吸収を、中断するデスリンボー。

表情はないが、楽しそうに体を揺らしている。

なんと、貫かれたデスリンボーの体は、元どおりに再生していた!


「ふぁはははっ。小娘……、今、何かしたかな?」デスリンボー

「な、なにっ?」ソーリー

「わしは中級悪魔だぞ。わしの欲望は、他の感情では傷つかぬのだ。格下のお主がわしを倒すには、欲望の力を手にする必要があるというわけじゃよ。わかったかね、んー?」デスリンボー


デスリンボーは、妖精を投げ捨てて、説明を始める。

まるで、攻撃してこいと言わんばかりに、無防備に体をさらしている。

下位悪魔の攻撃などいくらでも受けられるという絶対的な自信が、言葉にせずともデスリンボーの態度に表れていた!


「ほう。妖精が勝ち誇っていたのは、そういう理由か。……今からは、考えて行動しなければ殺す、というわけだ」ソーリー

「別に、わしは殺さんよ~?村人たちの欲望を駆り立てるために、お主の人型の体は役に立つ。どうじゃ、わしと組む気はないか?」デスリンボー


ソーリーに近づき、彼女の頬をつんつんと指で突くデスリンボー。


対するソーリーは、その行為に特別反応を示すわけでもなく、落ち着いた様子で話し続ける。


「先に、はっきりと言っておく。私は、考えて行動しないものを殺す。……デスリンボーとやら、お前の体をまた貫いてやる。お前は、体を弾丸で撃ち抜かれたように死ぬんだよ」ソーリー

「ふふふ。何度貫こうと無駄なこと。お主が欲望の力を持ち合わせておらぬことは、お見通しじゃよっ!」デスリンボー


ソーリーはデスリンボーの横を通り抜け、今度は背後から殴りかかる。

先ほどのように、勢いある攻撃ではない!

だが、デスリンボーの胴体を芯に捉えた、確実な一撃だった!

狙いを澄ましたような、スローで力強い一撃だった!


一方、デスリンボー!

欲望の悪魔は、微動だにしない!

ソーリーには目もくれず、背後から殴りかかられてもなお、口笛を吹いている。

覆せない、圧倒的力の差を見せつけるように!

この先の結果など、全て見通しているかのように!

まったくの不動!

デスリンボーは、ソーリーの一撃を背中から迎え入れた!


再び、ソーリーの拳が、デスリンボーの体を貫く!

ソーリーが拳を引き抜くと、デスリンボーの体はみるみる元どおりに再生していく。


だがその時、デスリンボーに異変が起きた!


「ぐああああああぁっ!」デスリンボー


大きな悲鳴をあげ、デスリンボーはよろよろと地面に降りていく。

彼の体は、完璧には再生しなかった。

背中からお腹にかけて、1本の細い穴が開いており、そこから欲望が外に流れ出てしまっている。


ソーリーの一撃は、デスリンボーにダメージを与えていた!


「バカな!わしの体に穴がっ!欲望の力を持たぬ貴様が、一体どうやって!?」デスリンボー

「おしゃべりが過ぎたな。自分の脇腹辺りを見てみるがいい」ソーリー


デスリンボーが体を曲げて、自身の脇腹を覗き込む。

そこには、凝視しなければ気づけないほどとても小さい、欲望を発するなにかが付着していた。

それは、埃ほどのサイズに丸め潰された妖精、アイムだった!


「アイム!?なぜわしの脇腹に!」デスリンボー

「ふんっ」ソーリー


ソーリーの力強いアッパーを受けて、アイムは弾のように、デスリンボーの胴と顔を突き抜けた!

デスリンボーに空いた穴から、欲望が流れ出ていく。

人が出血するように、悪魔の体から、欲望が失われていく。


これは、ただの一撃ではない!

この一撃は、悪魔だけの対決ならば起こりえなかった、予期せぬ凶弾!

ちっぽけな妖精がもたらした、勝敗を分ける、運命の一撃だったのだ!


空中に放り出されたアイムは、自然落下とはかけ離れた動きで軌道を変え、再びデスリンボーの体へと付着する。

その動きは、明らかにデスリンボーを狙った動きであった!

これは、裏切りの兆候!

あるいは、裏切りそのもの!

場の全員が、その事実をすでに理解していた!


「ぐおおおおぉっ!う、裏切るのかアイム!今まで、貴様の欲を満たしてやったわしを、裏切るのかぁ!?」デスリンボー

「……ごめんねご主人様。でも僕、これ以上痛いのは嫌なんだ。だから僕の身代わりになってよ。それこそが僕の望み、欲望なんだから」アイム

「あ、アイムぅっ!貴様ぁーっ!」デスリンボー

「ふ、怒ったな?私の思い通りだ!」ソーリー


デスリンボーに空いた穴から、欲望だけでなく、怒りが漏れ出てくる。

その瞬間、ソーリーはデスリンボーの傷口に顔を近づけ、口から怒りの感情を吸収し始めた!


「し、しまった!わしの欲望エネルギーが、怒りに!ええい、怒るなわし!エッチなことでも考えて、心を欲望の感情で満たすんじゃあ!」デスリンボー

「もう遅い。これだけの怒りを吸えば、私は中級悪魔としての力を得ることができる!」ソーリー


重い空気が、ソーリーの周りに漂い始める。

ソーリーが両手を広げると、彼女の体がみるみる変化していく!


翼が下へと垂れ始め、どんどんと伸びていく。

そして両の翼は重なり、まるでマントのような形へと変貌した。


手の爪はどんどん伸びていき、刃物のような輝きを発している。

最終的に、指の2倍ほどの長さの爪となっていた。


角は縮んだ。

髪の隙間から、わずかに顔をのぞかせている。


体の変化が収まると、ソーリーは鋭い視線をデスリンボーに向けた。


「これで私は、怒り以外の感情を発することができるようになった。どれ、試しに貴様を消し去ってやろう!」ソーリー

「お、おのれぇ!おのれえええぇっ!」デスリンボー


中級悪魔となったソーリーの爪が、デスリンボーを突き破る。

今までまるで無力だったソーリーの一撃が、ついに欲望の悪魔に届いたのだ!


彼女はもはや下級悪魔などではない!

デスリンボーと肩を並べる、恐るべき中級悪魔となっていた!

だからこそ、デスリンボーに攻撃が通じている!

デスリンボーから流れ出る欲望が、その証!

中級悪魔ソーリーが、今ここに爆誕したのだ!


攻撃の反動で、デスリンボーの体に付着していたアイムは、床に落ちる。

役目がなくなったことを悟ったのか、デスリンボーを追うこともない。

アイムは床の上で、ただ成り行きを見守っている!

強者同士の戦いを、見ているしかない!


欲望が流れ出て、体が小さくなっていくデスリンボー。

ソーリーは爪を振って、刺さったデスリンボーを、小屋の外へと放り投げる。

そして、飛んでいくデスリンボーに追いつき、大きく爪を振りかぶった!


ソーリー最後の一撃は、デスリンボーの体を空高くに吹っ飛ばし、そして完全に欲望の悪魔を切り裂いた!

デスリンボーの体は分解し、まるで煙のように風に流されて、空の彼方へと消えていくのだった。

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