第2話:妖精を握り潰す
悪魔ソーリーは、村はずれの森に足を踏み入れる。
村人に、怒りの感情を呼び戻すため、犯人の足取りを追っているのだ。
「この森の奥。そこに村人たちの感情が流れ込んでいる。村人を怒れなくした犯人も、そこにいるはずだ」ソーリー
「そのとおり! でも、ご主人様の元には通さないぞ!」妖精
「なんだと?」ソーリー
森の奥を睨みつけるソーリーの前に、一匹の妖精が立ちふさがった!
妖精は、少年のような容姿をしているが、背中からは半透明の羽が生えている。
人間の拳ほどのサイズしかない小さな妖精は、羽ばたくことでようやく、ソーリーと目を合わせることができていた。
ソーリーの鋭い目は、小さな妖精をすぐに捉えた。
そして、素早い動きで妖精を手の内に収めた!
「わっ!」妖精
「貴様。森の奥にいる悪魔の仲間か」ソーリー
「そ、そうだよ! やい、お前下級悪魔だろ。僕に手を出してみろ。中級悪魔であるご主人様が黙っちゃいないぞ! あふぎゃあ!」妖精
ばちゅっ、という音とともに、短い悲鳴をあげる妖精。
ソーリーの両手が、限界まで閉じられていた!
悪魔の力で両手を合わせれば、間にいる妖精など物ともしないのである。
ソーリーは、紙のようになった妖精をつまんだ。
「これ以上、痛い目に遭いたくはないだろう? 親玉の弱点を言え」ソーリー
「し、知りません。妖精の僕に、悪魔のことがわかるわけ」妖精
妖精が話し終わる前に、ソーリーは、空いていた方の指で妖精をつまむ。
これでソーリーは、左右の指で妖精をつまんでいることになる。
彼女が、左右の指を別方向に動かすだけで、妖精の体は紙切れのように引き裂かれてしまうのだ!
「ひぃ! あ! 欲だよっ! 欲ですっ! 欲望しかありえません!」妖精
「欲望だと?」ソーリー
「そ、そうです。ご主人様は欲望を源とする悪魔。欲望を奪えば弱体化するはずです! た、多分」妖精
「役に立たない策だ。私は、怒りを源にする悪魔。欲望の感情には、ほとんど干渉できない」ソーリー
「そ、そんな」妖精
ソーリーの宣告を聞き、紙のような体を震えさせる妖精。
しかし、ソーリーが妖精を引きちぎることはなかった。
それどころか、つまんでいたはずの妖精を開放し、片手の中に力強く握り込んだ!
「ああああ!」妖精
「だが、安心しろ。欲望を源としているのであれば、欲深いはずだ。人質の部下を失いたくないと思うかもしれない」ソーリー
「た、助けてぇ」妖精
「助けてやるとも。人質としてな。だが、貴様が役に立たなければ、敵のやる気を下げる音声装置として使うことになる。本当に助かりたいと思うなら、自ら進んで行動で示すことだ」ソーリー
ソーリーの手は、妖精が言葉を発せないほど強く握られていく。
一切手を緩めることなく、ソーリーは欲望の悪魔の元へと進んでいくのだった。
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