第7話 魔導を極めたオリジナル使い。
「これで決めてやる!!」
『
学生時代は『神属性』だと自覚がなかった為、未完のままで終わってしまった。
「『神隠し』起動。スロット選択───“
当然効果は簒奪だけではない。
発生した空間内であれば、使用者の全ての能力が倍増する上、神系統の魔法制限が全て解除される。
「『
さらに自身が使用する魔法全てに神属性が付与される。
「『超融合』発動────『
聖剣を持つ本体から虹色のオーラが放出される。
七属性を束ねたことで新たな『超融合』の形態を生み出した。
「『
『ムッ! させん!!』
白銀の世界と纏った虹のオーラを見て、瞬時に危険度を感じ取った魔王。
全方位からの『虹の光弾魔法』を発動を狙うジークよりも早く。得意技である破壊スキル『
パッチンと鳴った瞬間、死のオーラが衝撃波となってジークを襲うが、虹のオーラに接触した途端───消滅した。
『消えた……だと?』
「神属性が付与された『
最も魔王の死属性は覚醒している為、一時的な効果しか発揮しないだろうが、一時的にでも防げれば、彼からしたら上出来である。
待ちに待った逆転の一手だ。
「終わりだ───デア・イグス!!」
瞬間、魔力解放された。
虹のオーラを纏っていた彼の全身から、数え切れない虹の光弾が発射される。
自身の死のスキルが効かなかったことで、一瞬だけ呆然とする魔王へ全弾が降り注がれた。
『チッ、死を纏え───“
しかし、黙ってやれるような魔王でもない。『
発動したところで、全身から覆っていた死のオーラが濃くなる。
オーラの厚み自体も増して、見るからに防御力をアップさせて……狙って来た光弾を弾き返した。
(く、魔力層を引き上がるスキルか! 光弾が通らない!!)
そして、直撃した全ての虹の光弾が霧のように消滅してしまう。
ジークが纏った身体強化と同様に相手の魔法を無効化する纏うスキルのようだ。
『惜しかったナ!!』
完全に防ぎ切ったところで再び、死のスキル『
感覚的に既に見極めていたのか、パッチンと鳴ったことで発生したオーラは刃のように研ぎ澄まされており、まるで切り裂くようにしてジークの『
「クソ、今度はダメだったか!?」
『どれダケ優れタ効果だろうガァ! 一度目で分かるゾ、オレは!!』
「ッ……!」
そして、さらにもう一発。
鳴らそうとする指先に死のオーラを溜め込めて、確実に仕留めれる一撃を浴びせようとした────次の瞬間。
「らぁああああ!!」
『ム!?』
そこを待機していた琥珀色の『
(派生属性を全開で引き出せ!! 少しでも出力を落としたらあっという間にやられるぞ!!)
直接触れるのは自殺行為だが、鎧と派生である『地属性』の身体強化の魔力を身代わりに相殺する。展開している神属性の付与効果も重なって、発動させている全ての効果が何倍にも引き上がっていた。
『小癪な───ッ!?』
桁外れの力に手の拘束を振り解けない。苛立った魔王は別スキルの『
「シィァァァァアアア!!」
『───ホガッ!?』
開いた大口を塞ぐように神炎を帯びた『
「はぁああああ!!」
さらに槍を投げて派生属性の『業属性』の黒い炎を纏った膝蹴りによって、魔王の体は後ろに倒れそうになる。攻撃系の属性ではないが、『
『グググ……!』
しかし、口が塞がり苦悶の声を零しながらも、魔王は踏ん張って堪えている。
押し倒そうとした業属性を纏った膝を縛られた状態で強引に掴み取る。血走った赤き眼光で睨んでスキルを使用───。
「そこだ!!」
『───ッッ!?』
刹那の間、待っていた『
『ッッ!? ウッッ!?』
死属性と“一体化”しているので魔王を倒し切ることは出来ないが、『
「よぉー、良い顔になったんじゃないかぁ?」
膝蹴りをしたジークと並ぶように胸元に聖剣を突き刺したジークが言う。既に無属性を解いて、他の分身と同じように全身から聖属性の魔力を放出させていた。
『グゥゥウウウッ!!』
「喋らせないぜ」
神炎の槍を握るジークは、業属性の黒炎を槍に注いで聖剣持ちに続く。
弓持ちのジークも刺さっている矢から『天地属性』の魔力を魔王へ流し込み出す。
魔王の腕を抑えているジークも鎧越しに地属性の魔力を全身から放出。
腕から胴体ごと縛っているジークは、“獄天”を維持しつつ絡みつく大蛇を通して盾から『虚無属性』の魔力を魔王へと流していった。
「あと少し……! あと少しだっ!!」
『ッ──!!』
五人のジークたちによって、魔王の身動きは完全に取れなくなった。
さらに『
そうして、魔王に注がれていく数種類の『派生属性の魔力』。
同じ派生属性である死属性の層を破って、魔王の体内や魔力体へ大量に注がれていた。
宿主であるジークですら、調整が困難だった属性魔力の数々。
しかも、派生属性は基本属性と違い純粋な属性ではなく、変異した属性だ。
それが魔王の体内にある死属性と混ざり合い、属性と属性がぶつかり合っている。……ある程度知識のある者なら、この時点で危険な事実に気付いたかもしれないが、魔王は未だに気付いておらず、ただ息苦しい中で嫌な予感を感じ取っていた。
『ゴ、ゴバ……!?』
「安心してくれぇ……! 魔力総量には自信があるッ! タップリ注いでやるからさぁ! 結界も張って、外には一切被害を出さない!!」
冷や汗を流しながら、聖剣を通して注いで魔力をさらに上げた。ジークも魔王も燃え滾っている感覚で、一瞬にして燃え尽きてしまいそうな気分であった。
(意識をしっかり保て! 気力を振り絞れ! チャンスを決して───逃すなッ!!)
他の皆も注ぐ魔力をさらに上げていったことで、ジークの自身の魔力が急激に減少していく。回復レベルが一般の魔法師よりも高いジークだが、消耗率が高過ぎて全く追いついていないのだ。
『……ッッ!!』
そして逆に膨張率が増していく魔王の体内魔力。
いよいよ死属性が薄れてしまい、ジークの魔力に肉体が飲まれて……。
(───そ、そうカッ! そういう狙いだったのカ!!)
この時、初めて魔王も彼の狙いをハッキリと理解した。
まさかと自身の考えを疑ったが、覚悟を決めたジークの目を間近で見た途端、とても冗談とは思えなくなってしまった。
(だとしたら……マズイッ!! これはマズ過ぎるゾッ!?)
『ウガガガガガァァァァ!!』
それどころか、らしくなく焦りを見せて拘束から本気で逃れようとしたが、ジークの拘束がそれを許さない。
「逃・す・か・よォッ!!」
「お前はここで倒れるんだッ!!」
常闇の大蛇の縛りに四人のジークに抑えられて、微塵も動けそうにない。
全員が力を振り絞って緩めることなく魔王を動かなさい。
魔法も魔力も限界まで注ぎ続けることで、無理矢理止め続けて────。
その時はきた。
『ブッ──!?!?』
「────」
魔王の体を突き破って、何色も混ざり合った光が爆発を起こした。
囲っていたジークたちをも強烈な光が飲み込み。結界内部で帝城の中心地を莫大な魔力の大爆発が巻き起こった。
『ハハハ、死ぬかと思ったゾ? コノ野郎……』
爆発の中心地には瓦礫すら残っていない。真っ黒な土の地面のみが残っているだけ。
そんな中心地で自爆した二人の男は生きていた。
(アレに耐えたか……やはりか)
しかし、片方は肉体自体があるのかないのかも分からず、暗黒のオーラのみが肉体を作って立っていた。
(こっちもギリギリだったけどな。肉体が残っていたのは、魔力の大半が俺のだったからだろう)
もう片方は死んではないが、身に付けていたローブはボロボロで体の至る所から血が滲み出ている。奇跡的に手足は無くなってはいないが、額からも血が流れて真っ青な顔で倒れていた。
(『神隠し』に溜め込んでいた魔力も使い切っていたから、防御に回すことも出来なかったのが痛かった)
だが、頭はしっかりと回っていた。ボロボロなのは間違いないのだが……。
あの爆発でも死ななかった魔王を見て確信した。というか肉体がほぼ滅びてオーラのみで生存しているのを見れば明らかであった。
(これでハッキリした。……奴は不死身だ)
それは、たとえではない。
《鳥王》、《幻王》のような固有のスキルによるものでもない。
デア・イグスという存在そのものが能力とは関係なく、不死身の存在となっていた。どういった経緯でそのような存在となったかは分からないが、地獄界に落ちたことが彼を大きく変えたらしい。
(勘弁してくれ……悪い予感が当たったよ)
シミュレーションした時から可能性はあった。
生憎シミュレーション中の幻影は不死してなかった為、試す機会もなかったが……。
『ハァ、ハァ……愉しめたゾ! ハァ、魔導王メェ!!』
完全に肉体が再生したところで魔王が飛び掛る。
しかし、ダメージは大きかったか、息を切らして纏っている暗黒のオーラも少なかった。
弱っている証拠だ。ジークの努力が実った瞬間である。
『シネェェェェェ!!』
(ッ! 今だ!)
僅かに回復した魔力。そして残っていた魔力を操作。
倒れている状態の中、死のオーラの鉤爪で飛びかかって来た魔王の横へ────『
『な!? 消え───!?』
「『
首元から下の胴体へ。
斜めに切り裂く手刀の『
漆黒の血飛沫が空を舞った。
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