SF(スコシ・フレッシュ)

 よく晴れた日曜日の朝、とある喫茶店でメニューを眺めていると「塩モーニングセット」という文字が目に入った。塩モーニングセット! 塩ラーメン、塩焼きそば、塩むすび……私は「塩ナントカ」という言葉が好きだ。「塩ナントカ」には何処かナチュラルでフレッシュな響きがある。

――まさに「モーニング」にピッタリではないか。

 素晴らしき発見。素晴らしき朝。

「マスター、『塩モーニングセット』を一つ」

 私は躊躇なくそれを注文した。


 カリカリに焼けた塩パン、塩味の効いた生ハムサラダ、そして熱い珈琲――これぞ塩モーニングセットだ。

 パンの焼き加減、サラダの茹で加減はることながら、やはり使われている塩が良いのだろうか、素材が引き立っているように感じられる。私は香り豊かな珈琲を一口啜ると――思わず吐き出しそうになった。何だこれは。苦い――というより辛い。

「マスター、この珈琲は……」

「塩珈琲で御座います」

 塩珈琲! 私はこれほど不味い珈琲を他に飲んだことがない。これは革新的な不味さだ。

「マスター、悪いけど水を一杯貰えるかな」

「はい、かしこまりました」

 差し出されたグラスに口をつけると、それは塩水であった。

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