SF(スコシ・フレキシブル)

『や <小ナリ み』


 今朝、納豆をかき混ぜているとき、突如こんな不等式が出現した。


 言われてみれば「や」より「み」の方が多少なりとも大きい心持がする。しかしながら、よくよく考えてみると「み」が「や」に勝っている点が一つも思い浮かばない。


「み」の〆の辺りを見つめていると、何処か「ゐ」に見えてくる。対してはらい(ノ)の辺りを見つめていると、何処か「升」に見えてくる。


 漢字……まさにそれだ。私は早速スマートフォンで「や」と「み」をそれぞれ検索した。


――どうやら「や」は「也」の草体であり、「み」は「美」の草体であるらしい。


 なるほど……と思いかけたが、何処か判然としない。元来「み」が「美」の草体である、というのが腑に落ちないのだ。


――どうやら「み」は「美」の別字「羙」から生まれたらしい。


――しかし、本来「羙」は子羊の意味を持つ「羔」の別字であり、「美」とは全く無縁の字だったという。


 一体、この子羊は何処から迷い込んできたのだろうか。ああ、迷羊ストレイ・シープ迷羊ストレイ・シープ


 私は登校時間が迫っているのを確認すると、「やくみ」と書かれた筒を手に取った。

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