SF(スコシ・フューナラル)

 オニク食べよ♪

 オニク食べよう♪

 オニク食べよ♪

 オニク食べよう♪

 おニク ニク ニク ニク

 肉食べたい♪


――私は車に揺られながら、雨粒が窓に描く軌跡を眺めていた。


 春雨。夜はその深さを次第に増していく。雨飛沫の音と共に一つ、また一つ、光の魂が窓の外を流れる。ワイパーは動き、時は刻まれる。私はシートに身を深く沈め、果てしない学校生活に想いを馳せた。

 

――カーラジオは愉快な音楽を流し続けている。


 オニク食べよ♪

 オニク食べよう♪

 オニク食べよ♪

 オニク食べよう♪

 おニク ニク ニク ニク

 肉食べたい♪


――私は積み上げられていく祖母の遺骨を見つめていた。


 葬式。骨壺の中に真っ白な欠片が敷き詰められている。鶏肉の骨とはまるで異なり、酷く乾いていた。その上に積み上げられた――髑髏どくろ。人間の頭蓋骨は本当に髑髏の形をしていた。その髑髏の、両手に収まる程の小ささを今も覚えている。だが、私はその持ち主の顔も名前も知らない。


 オニク食べよ♪

 オニク食べよう♪

 オニク食べよ♪

 オニク食べよう♪

 おニク ニク ニク ニク

 肉食べたい♪


――僕は姉と並んで祖母と対峙していた。


 介護施設。僕はじっと俯いている。その日、僕が言葉を交わしたのは祖母――ではなく、見知らぬお婆さんだった。僕らは最初そのお婆さんに声を掛けられて、その人を祖母と勘違いしたのだ。そのお婆さんの、明るく楽しそうに笑っていた姿を今も覚えている。その時、実の祖母は背を向けていて、対面したときもあまり楽しそうではなかった――ように思う。それが祖母の、最後の姿。



(歌詞引用:ハル&チッチ歌族『お肉食べようのうた』)

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