第4話:露天風呂

 俺は魔力を惜しまずに使って、簡単に片づけることにした。

 バトル漫画ではないので、無理に戦う必要などない。

 楽して安全に勝てるのなら、それが最良の策なのだ。

 だからといって毒などは絶対に使わない、食べられなくなってしまう。

 命を奪う以上美味しく食べる責任があるから、酸欠にして殺すのが一番なのだ。

 特に地下に巣を作るような種族は、空気から抜く酸素の量が少なくて楽に殺せる。


 今回の大蟻の群れは結構多くて、一万を少し超えるくらいだった。

 それほどの大蟻の群れが生きていけるくらい、この魔境は広大なのだ。

 しかし、この一万は俺にとっても結構大きな存在だった。

 まだ七歳だし、積極的にレベル上げしていなかったから、魔力とレべルが一致しない、アンバランスな存在だったのだ。

 まあ、行商人の話を信ずるのなら、俺は化け物じみた魔法使いらしい。


 そんなレベルは低いが莫大な魔力量で常識外れの強さだった俺が、集団なら亜竜さえ斃す大蟻を一万以上斃したのだから、レベルが跳ね上がったのは当然だ。

 レベルが跳ね上がったのと同時に、桁外れに莫大だった魔力量が、倍々倍と増えていくのを自覚した。

 この世界はゲームや小説のようだとは思っていたが、レベル補正が入る世界なんて、前世の科学や常識とは違い過ぎる。

 まあ、魔法がある時点で常識は捨ててるけどね。


 それにしても、低レベルでこの世界で化け物同等の魔力量を持っていた俺は、レベル上昇と共に千倍の魔力量となった。

 正直どれほど強くなったのか、自分でも恐ろしいモノがある。

 この世界でも最強と考えられている、龍にだって勝てるかもしれない。

 もしかしたら、神にだって勝てるかもしれない。

 そんな事を思いながら、これもまた千倍もの容量となった専用魔法袋に、斃した大蟻と掘り出されていた金銀財宝を入れた。 


「おお、おつかれさんだったな、われ。

 疲れを癒すのに露天風呂でも入ってこいや、われ」


 祖母が俺から蟻蜜を受け取って、満面の笑みを浮かべて労ってくれる。

 だがその笑顔に騙されてはいけない、何故なら露天風呂を沸かすのは俺なのだ。

 早い話が、俺に露天風呂を沸かさせておいて、自分達も風呂に入る。

 その間に氷室で蟻蜜をキンキンに冷やして、風呂上りに飲もうという考えなのだ。

 そしてその氷室も、俺の魔力で作った氷が頼りなのだ。


 それでも、豊満な肉体の村の女達や、ハーレム一号のアヤーナと一緒に入れるのなら、喜んで風呂も沸かすし氷も山ほど作る。

 だが、なにが、男女七歳にして席をおなじゅうせずだ!

 行商人に聞いた話では、そんなに倫理観が厳しいのは、聖都くらいではないか。

 ほとんどの国では、大人でも混浴しているというではないか!


「おんどれ、われ、なんか文句でもあるんか?!」


「ありません、おばあちゃん」

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