第11話 お前は情緒イカレててポンコツでその上変態であったか

 さて、作戦を立ててから今宵は金曜日の夜。現在、自室にて作戦の手順を頭の中で整理しながら、二人にちゃっちゃと連絡してっと......お、案外早く既読ついたな。


 さて、返事の具合は......ふむ、俺が間にいるおかげか二人とも遊びの約束は了承してくれたようだ。

 とはいえ、二人とて気まずいままの関係性を早く解消したい表れでもあるのだろうな。


 それはそれで好都合。こちらとしては実に楽なプラン1でこっちが主導権を握る形で動かせる。はぁ、全くラブコメ主人公の親友というのも大変なもんですなぁ(笑)。


 ってことで、明日の準備を始めようかな。えーっと、変装道具とと......あ、あいつにも一応連絡しなきゃな。プラン1で行くから俺の通知に気付けよっと。


――――プルルルル、プルルルル


 え、ものの数秒で既読ついたと思ったらまさかの電話!? 全くもって電話で会話する必要性が見られないのだが。とりあえず、出るか。


「.......なんのようだ?」


『開口一番にそのセリフは傷つくわ。といっても、ちゃんと用があったから電話したかったのだけど』


「普通にメールでいいだろ......で、用って? 俺の作戦に関わること?」


『え? 普通に声が聴きたかっただけだけど?』


「切るぞ」


『あ、待って待って! 冗談じゃないけど、待って!』


 いや、そこ冗談っていう場面だろ。どちらにせよこれから俺のプライベートタイムが奪われるということでちょっとイラっとするけど。


「なんだ?」


『まあ、その......作戦って言ってもあくまであなたがどうやって二人から離脱するかって話じゃない?』


「ああ、そうだが。それが?」


『単純にどこで遊ぶのか知りたくて。一応、作戦に加わってるわけだし? 教えてくれてもいいじゃない?』


 なぜコイツに教える教える必要があるのかという疑問は言われたすぐに思いついたが、まあ別に隠すほどでもないだろう。なんせコイツはあくまで俺に電話するだけだから。


「まあ、普通だよ。別にデートコースを選ぶわけでもないし。普通にモール行って、少し時間を過ごしたらお前に合図のメール送るから反応してくれればいい」


『それであなたは出歯亀ウキウキウォッチングと』


「そんな昔のお昼の長寿番組のテーマソングを小粋に挟まないでくれる?」


 しかし、コイツの勘は無駄に鋭いな。確かに、俺が用意する中にカメラを持っていくのは保険を作る意味合いで含まれているが......。


「要件はそれだけか?」


『時間帯は?』


「なんでそこまで?」


『いえ、やっぱりいいわ。さすがに電話するだけなのにここまで聞く必要はないものね』


 ん? やけにあっさりと手を引いたな。作戦を話し合ってから数日間はプラン2についての実行性の高さを弁舌していたのに。


 まあ、単純に諦めたということだろうな。その諦めをもっと別の、それこそ俺に対する恋心的なものに向けて欲しかったりするんだが。お前に構ってる暇はないし。


「それじゃあ切るぞ」


『あ、待って。影山君は写真って欲しい?』


 写真? なんだ藪から棒に。そもそもなんの写真......ハッ、そういえばあいつは俺の艦〇れスキーしゅみを知っていたっけな。


 となれば、写真って言うのはまさか......時雨ちゃんの写真もとい画像であろうか!?

 俺も時折ツリッターにてそういう絵師さんのを探して見ては「神絵ありがとう!」と思いながらいいねしてるが、あいつも俺への賄賂的なものでそういうのを探していたのか?


 いや、さすがに俺がそういう絵を見てることまでは知らないだろう。それを知ってるのは光輝ぐらいで、光輝と姫島あいつは驚くほど接点がない。


 一応、姫島は乾さんと結弦と仲良いが、光輝と二人では俺が前にセッティングした当番以来見たことないしな。もちろん、見逃しもあるだろうけど。


 となれば、たまたま見つけたというのが妥当の線であろう。全く、そんなことで絆されはしないぞ。だが、先ほどの俺の貴重なプライベートタイムを奪ってることに関しては不問にしてやろう。


『欲しい?』


「まあ、見せてみろ」


 そして、ピロンという通知音がしたので、メッセージ画面を開いてみると――――そこには服を胸元までたくし上げた画像であった。


 まあ、それはつまりブラからの谷間ががっつり映ってるわけで、もっと言えば自撮りしている姿見鏡に当の本人の茹でたタコのような真っ赤な顔が映ってるわけで......しかも半泣きで。


――――ピキッ


 前言撤回!


「くたばれ、変態」


『え、ええ!? そういう反応なの!?』


 どういう反応を期待してたんだ! 俺がそれを見て喜ぶ姿か? 照れる姿か?


「はぁ、お前は何がしたいんだ?」


『その......男の子はこういうのに喜ぶって。二次元愛が強いあなたでもさすがにそこら辺の性欲はあるだろうって思って......』


 だとしても、アプローチの仕方がド下手くそかよ。今時そんな手口は同人誌でも見ねぇぞ。はあ、コイツは本当に分からないな。この情緒イカレポンコツ変態女め。


『もしかして、性欲ないの?』


「あるに決まってるだろ。俺とて健全な男子であるぞ。コミケでは未だ変えないR18の艦〇れ同人誌をありとあらゆる手段で俺まで横流ししてもらい、俺の息子は十分にお世話になっている!」


 あ、今完全にいらんこと口走ったな。ああもう、ままよ!


『あなたの部屋ってそんなにいかがわしい本があるの......? それも全て二次元』


「いかがわしい? ハッ、嘆かわしいわ。それらは俺にとって全て全年齢版KENZENなものだ」


『......』


 なんかさすがの俺でも引かれてることはわかる。心のダメージを割りに負ってしまったが(主に自爆だが)、あいつが俺に興味を無くす理由としては十分すぎるだろう。


「そもそもなぁ、いくらなんでもそれはやりすぎだと思うぞ? 好意を抱かせようったってさすがになぁ。恥ずかしさで泣くぐらいだったらやらなければいいのに」


『泣く? 泣くって誰が......あああああ!?!? がっつり映ってる!? いや、見ないで! 画像今すぐ消して!』


 おい、お前の恥じらいのポイントは一体どこなんだ? 言われなくても消してやるけど、色々ネットは怖いし。


「恥ずかしがるところ違くね? そもそもお前にこんな度胸あると思わないし誰の入れ知恵?」


『......同人誌』


「同人誌!?」


 いや、なんちゅーのを教科書にしてんだよ。っつーか、まさかあいつからそんな言葉が出てくるとは。言ってしまえば、あんなの付き合った初日にセク〇スするイカレボーイ&ガールだぞ?


『胸を見せること自体は1時間くらいかけて覚悟決めたからいけたけど』


 なんて無駄な1時間......。


『まさか鏡に映ってるとは思わなかったわ。角度の練習していたのが仇になったみたい」


「お前はもう脳内から根本的に直した方が良いと思う」


 ......なんというか、コイツは別の意味で放っておくと危険な気がしてきた。

 あんな画像を送りつけるこうどうも覚悟を決めたらやってくるんだからな。誰かがあいつに自制を教えてやらねばならない気がするんだ。


「はあ、ちなみにお前の性知識はどうなってる?」


『そ、それは和姦という解釈でいいのかしら?』


「なんでそうなる。頭沸いてんのか、変態」


 何をどう解釈したらそこに行きつくのか。


『じょ、冗談よ。それでその知識っていうと......具体的な名称で言わなきゃダメ?』


「別に好きに濁せばいい」


「なら、おしべとめしべがこうズコッバコッっとしてそれで―――――」


「OK。把握」


 なんで濁せって言ったのに擬音語使うかなこの子は? 余計に生々しくなっちゃてるじゃんか。

 そして、把握ってのはもはやあいつの性知識に関することじゃなくて、なんかいつか取り返しのつかないことをしでかしそうだから観察というか教育というか......。


 はあ、あいつにまともこういうこと言えるのって俺ぐらいだろうな。俺しかいないんだろうな......はあ。


 あー、凄いめんどくさいけど仕方ない。あいつに秩序というものを教える必要があるな。さすがに知り合いで犯罪者を出すにはいかないし。


「とりあえず、明日は俺からの連絡に気付けよ」


『命に代えても』


「重いわ」


 やばい、すごい疲れる。今日は早めに寝よう。

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