第4話 退かれ

 僕はきっと神島のことが好きなんだろう。

 そう思い始めたのは、最近あることに気付いたからだ。


 ――神島が、光っていた。


 嘘じゃない。ほんとに光っていた。

 そのせいで神島がクラスにいたらすぐに気付くし、無意識に目で追ってしまうしで大変だった。

 もちろん僕は超能力者じゃない。ただの一般人だ。

 でも。それでも。

 あんなにキラキラして目が離せないなんて。

 神島以外の人が光っていないところを見ると、つまりそういうことなんだろうと思う。来年文理選択がある際には迷わず理系を選ぼうというくらいには、僕は論理的思考ができるつもりだ。

 そんな僕が論理的に導いた結論が。

 僕は神島が好きなのだ、ということだった。


 さて。

 結論が出たところで僕はどう動くか。

 告白は苦手だ。いや今までしたことはないんだけど。

 今まで築いてきた関係を全て賭けて挑む、ここ一番の大勝負。

 成功すれば自分一人が特例扱いの関係に進歩するが、失敗すればもう今の関係に戻ることはない。

 ハイリスクハイリターン。今までの日常も何気ない幸せも、ここに置いていく必要がある。

 そんなリスキーなら告白なんてしなくていいんじゃない?

 いずれするにしても、一回退いて、もっと今の時間を楽しんでからでもいいんじゃない?

 そうだよな。時間はまだある。急がば回れともよく言うじゃないか。

 うんうん、と一旦退避案に賛同しつつも。

 僕はもう一つの声に翻弄される。

 でもあんなに綺麗なもの、他のやつらが放っとくだろうか。

 この世にはイケメンが相当数いる。

 実際僕のクラスにも何人かそう呼ばれているやつがいる。おそらく500ルクスくらいの。

 もし彼らに彼女の光が見えていたとしたら?

 彼らの目に留まれば、即座に掻っ攫われるんじゃないか。

 イケメンは憎たらしいほど手が早い。

 そしてイケメンは忌々しいほど平気な顔で大勝負に挑んでくる。

 そんなのが相手だと、僕なんかじゃ歯が立たないのは目に見えてる。くそ、イケメンは家から出るな。

 ……ああ。

 どうしよう。

 僕はどうしたらいい?

 教えてくれよ、論理的思考。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る