3

 ムニカは校舎の目立たない隅っこの方で穴あきブロックを椅子にして一人寂しくお弁当を食べていた。

 穴あきブロックほど座るのに適した物はない。

 もくもくお弁当を食べて空になるとヒラヒラと踊るように飛んでいる蝶々を見てのんびりしていた。

 ヒラヒラは蝶々とフリルには必須である。

 そこへ何か物音がしたのでムニカはそちらに顔を向ける。

 ムニカと同じクラスの女の子だった。確かカレンという大人しそうな女の子だ。

 ここは女子校なので女の子がいてあたりまえなのだが。

 にっとムニカは歯が抜けた笑顔を見せると女の子は安心したように彼に近づいていった。

 もじもじしている、背中が痒いのだろうか?

 否、彼女はムニカとお友達になりたいと思っているのだがなかなか言いにくいのでもじもじを発生させなければならない状況となっているのだった。

 だが彼女は勇気を出して制服のポケットから何かを取り出した。

 虫であった。

 「あー! それもじもじ虫の幼虫! どうして持っているの?」

 いつもぽーっとしているムニカであるが虫の事になるとテンションがあがる。

 「実は私も虫が好きで、みんなの前じゃ言えなかったけど、だって女の子が虫が好きなんて変でしょ?」

 ムニカはそのまま空を飛んで行きそうなぐらい首を横にふった。

 「そんな事ないって虫は面白いものや格好いいものまでいろんなのがいて楽しいよね」

 「うん、面白い生き物の上位に入るよね」

 カレンは自分の言っためちゃくちゃな言葉に笑ってしまった。

 「だすな」

 それで二人はまた笑った。

 「ですねを間違えて言っちゃったよ」

 クスクス二人で笑いあってすっかり二人は友達になっていた。

  その時何者かが近づく音がした。

 その音はまるでブルドーザーのようだった。

 「ちょっと、私のカレンになにしてんのよ!」

 ムニカはびっくりしてひっくり返った。

 気の強い女の子ポエムであった。

 「カレン、こんなのといると虫になるわよ、ザムザみたいになるわよ」

 ポエムはぎゅーっとカレンを大きなポインに顔をうじゅもらせた。

 高速でカレンの頭をなでるポエム。

 「この子と私は結婚するんだから手を出したら許さないわよ」

 イッーと歯を見せて威嚇する、ポエム。

 「もー、ポエムはいつもこうなんだから、ムニカ君またね」

 ポエムに抱かれたまま動きにくそうにカレンは校舎の曲がり角で見えなくなった。

 まるで嵐が過ぎたように静かになる。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る