第12話 真相

12-1 密会

 「いやあ、お疲れね、慎一ちゃん」

 首相・高田は、警察庁長官・土田を、改めて、自身の弟でも癒すかのように言った。

 政治上の密談というより、家族、親族内の私的会話のように聞こえる。

 「早速だけど、<世界創世教>の件、お疲れだったわね」

 料亭<H>に隣接する<F>で会話を聞いていた一同は、早くも話の本筋というか、中心というべきものが出て来たことに驚いた。

 「劉仁宏を殺害したのは<世界創世教>ということにしておけば、邪魔な劉仁宏を殺害したのは、我々じゃなくなるものね」

 首相・高田の声であった。

 <F>で、盗聴していた一同はさらに驚いた。

 「<世界創世教>のせいにしておけば!?だったら、真犯人は高田首相!?」

 <F>の一同は、驚きの表情を顕わにしつつも、固唾をのんで、会話を聞き入っていた。

 「<外国人参政権>やら、何やら、定住外国人の人権を主張する劉仁宏は、我々、民政自由党政権にとっては、邪魔な存在だったのよ」

 高田はそう言うと、彼女の言葉は暫く、途切れた。おちょこで、一杯、酒を口にしているのだろうか。

 <F>の<□□株式会社重役会>関係者は、皆、沈黙しつつ、次の台詞を待った。

 彼女の台詞が再開した。

 「我々、民政自由党政権としては、経営者とか、或いは、新興企業家を含めて資本家の立場に立って活動する政党。である以上、それこそ、グローバル化の今では、労働者の労値は低く抑えた方が、経営陣には喜ばれる。そこには、定住外国人の低い労値は欠かせない。<外国人参政権>なんか、成立したら、それこそ、これまで低賃金労働者だった定住外国人の待遇改善への議論やら、政治的動きやらが、各地方議会等で起こるでしょう。そうなれば、我が党は、各地方での活動が苦しくなるかもしれない」

 土田の声が続いた。

 「しかし、劉仁宏議員1人を殺したところで、<外国人参政権>への流れは止められますかね」

 日本という

 <社会>

で生き、労働者として暮らす定住外国人は、

 <定住>

しているのであって、全く、

 <お客人>

なのではない。しかし、そうした

 <定住>

によって、同じ日本の<社会>の一員であるにもかかわらず、定住外国人の経済状況は、場合によっては、

 <劣悪>

と言わざるを得ない事例もあり、それこそ、

 <社会問題>

と化して、久しかった。

 「狙ってたんでしょう、<社会的効果>ってやつを」

 土田がさらに問うた。

 「そうよ、その<社会的効果>ってやつをね」

 高田が答えた。

 「社会的効果?何のことだ?」

 <F>にて、2人の会話を聞いていた一同は、さらに驚き、というか、


・高田-土田


の会話に引き込まれて行った。

 「我々としては、勿論、外国人参政権は認められないし、外国人の人権を半ば制限する必要がある。もし、外国人参政権をはじめ、彼等彼女等の人権を認めたら、我々より<右>の<愛国誠民党>に勢力を奪われるかもしれない」

 2030年代の今日の日本においては、

 <社会>

においては、

 <民主労働党>

のような

 <左>

からの<外国人参政権>をはじめとする外国人の人権を主張し、ある種の

 <共生社会>

を目指す動きがある。勿論、いずれも、今日の

 <社会>

の動きに突き動かされてのものであった。

 しかし、同じく、<右>からの立場で、

 <社会>

の動きに突き動かされて動く

 <愛国誠民党>

のような勢力も、現政権は無視できないのであった。

 <愛国誠民党>

は、はっきりと、ある種の

 <外国人排斥>

を主張していた。

 現政権たる民政自由党が、こうした問題に対し、あいまいな態度であれば、場合によっては、

 <右>

の票が、

 <愛国誠民党>

に流れる形で、現政権は、次期衆院選にて、大敗北の可能性もあった。

 <F>の関係者は、自身等のホープであった劉仁宏への殺害に怒りの感情を持ちつつ、

 「う~む。しかし、そうであっても、劉仁宏氏を殺すことで、それこそ、何の<社会的効果>があるんだ?」

と、心中にて思ったのであった。

 その答えは、高田その人の口から出た。

 「今なら、<外国人参政権>反対の世論も、一定程度、根強い。そこで、外国人の参政は、<社会>に何かしら、危険をもたらすという雰囲気を漂わせることが必要だったのよ」

 <F>

で、盗聴しているメンバーの中には、定住外国人でありながら、

 <国籍>

故に、参政権がない者もいる。彼等彼女等は、高田の

 <回答>

に更なる怒りを顕わにした。

 「この後は、所謂、<公式発表>ですな?」

 土田の問いに、

 「そうよ、<公式発表>」

 高田の声が続いた。

 何かのシナリオがあるらしい。何か?

 「公式発表において、劉仁宏衆院議員を殺害したのは、都内○○市の署に拘留されている深沢辰美、相川雄造の2人が実行犯となった<世界創世教>の犯罪と発表される」

 <世界創世教>の関与が明らかとなった。

 ならば、<世界創世教>は如何に関与していたのか?

 「あそこに拘留されている2人は、確かに、世界創世教の教徒。この2人が、日本にはまだ、外国人参政権がないのを良いことに、そこにつけいって、勢力拡大をしようとしていたところ、<外国人参政権>によって、公式な政治参加のルートが開ければ、自身の勢力が脅かされると思い、<外国人参政権>の妨害のため、劉仁宏氏の殺害に及んだ、ということですな」

 「その通りよ」

 話、というか、

 <劉仁宏氏殺人事件>

のシナリオはだいたい、分かって来た。

 「その上で、日本でのが外国人の参政は社会に不穏なものをもたらすものであり、外国人への政治参加を制度として許す外国人参政権は、現時点では、時期尚早なので、許されないと主張することで、<愛国誠民党>に対抗すべきなのよ。そうすることで、票が流れるのを防ぐべきなのよ」

 「さ、とにかく、一仕事、おわった。飲みましょう」

 高田の声であった。

 「はい」

 土田の声が続いた。他の列席者も酒を口にし始めたようであった。

 高田等の現場である料亭<H>に隣接する料亭<F>

での、ある種の

 <スパイ作戦>

を行っていた彼等彼女等は、その後、暫く、盗聴を続けていたものの、後の会話は、

 <劉仁宏氏殺人事件>

には、関係ないようであった。

 「よし」

 リーダー格の男性が、言うと、各自にまず、スマートフォンに会話内容が録音されているか否かを確認させた。各自のスマートフォンには内容が録音されているようであり、問題は無いようである。盗聴装置そのものにも録音されている。

 リーダーは一同を見回し、

 「OKだ!」

と小声で言った。その上で、メンバーの1人をまず、会計に行かせた。料亭のスタッフに、何らかの理由で、不意に座敷に入られ、活動を見られてはまずい。

 彼が会計に行っている間に、リーダーはじめ、各自は、スマートフォン等を片付け、退店の準備を始めた。

 リーダーは情報を素早く、電子メールの添付ファイルとして、佳華に送信した。

 そして、電子メールを受信した佳華は、素早く、それを玉井の個人パソコンに転送した。


12-2 行動準備

 玉井が、佳華からの転送メールとして、<F>での添付ファイルを受信して、数日が経った。

 玉井は、上司の久川に声をかけた。

 「どうした、玉井君」

 「我々が取り組んでいる件について、ご相談したいんです」

 玉井の声掛けに対し、久川は、

 「じゃ、午後2時半頃で良いかね?」

 「ええ、結構です」

 「じゃ、その時間に」

 久川からの約束を確認すると、玉井は自身のデスクに戻った。

 相変わらず、データベースの確認に日々である。下田が玉井と、やはり、同じ作業をおこないつつも、声をかけて来た。

 「何か、事件についてのネタが入って来たんですか?」

 「まあな、ただ、すまない、僕と久川警視とでまずは話し合うので、まだ、下田君には、このネタはまだ、明かせないんだ」

 「分かりました」

 一言だけ言うと、下田は自身のパソコンに向き直った。

 玉井も、自身のパソコンに向き直りつつ、心中にてつぶやいた。

 「佳華から届いた料亭<H>での音声録音を使って、首相の高田や、長官の土田を追い詰めることに、上司としての警視を追い詰めることができれば、事件解決に一挙につながるはずだ。あくびが出そうなルーティンワークの日々も終われる」

 そういった

 <新展開>

の展望があり、いつも通りの

 <ルーティンワーク>

をなしながらも、それでいて、いつもとは異なる状況にあるからか、今日は、何かしら緊張感があり、あくびも出ない。

 玉井の右隣の下田は、左隣の玉井が、今日は、いつもとは異なり、何かしら、

 <覇気>

を発していることを感じ取っていた。眠くなりそうに感じつつも、

 <覇気>

のない姿勢は、格好が悪い。先輩の玉井から叱責されるかもしれない。下田は、自身に、

 「しっかりしろ!」

と内心、声をかけ、自身を叱咤した。同時に、下田としても、

 「なんで、こんな<ルーティンワーク>ばかりなのか。捜査の本筋から外されているのではないか」

と感じ、加えて、

 「本件の新しい<ネタ>とは何か?」

とも思ってみた。しかし、20代の新人刑事たる下田には、まだ、それを考えるには未熟だった。

 「俺も、刑事として、一人前になって、玉井警部のように、何かこう、出世してみたいな」

 暫くして、時間が経ち、玉井が下田に言った。

 「すまん、俺、玉井が下田に言った」

 下田は、

 「どうぞ」

といって、玉井を送り出した。

 玉井は、重大な 

 <ネタ>

を握っているのだろう。今日は、昼食を一緒にしたところで、事件について語り合うことはできないだろう。

 玉井は、昼食の後、手洗いの個室にて、改めて、自身のスマートフォンに佳華からの録音情報が入っていることを確認した。この録音は、事件の全てを一気に解決し得る

 <爆弾情報>

である。

 <爆弾情報>

を確認の上、玉井は、そのスマートフォンで、時刻を確認した。

 

午後:1時50分


である。そろそろ、久川との面談の時間が迫って来ているようである。

 トイレを出た玉井は、公安の部屋に戻ると、暫くして、久川に声をかけた。

 「すみません、久川警視、別紙での面談、お願いできますか」

 「あ、そろそろ、時間だったな。よし、じゃ、行こう」

 2人はいつもの職場を出、別室に向かった。

 別室にて、2人は向き合って、椅子に座る形となった。

 「すみません、お忙しい中、無理を言いまして」

 玉井はまず、時間をとってくれた久川に礼を言った。

 「ん、ああ、で、話ってなんだ」

 「これを聞いて頂きたいんです」

 そう言うと、玉井は2人の間のテーブルに自身のスマートフォンを置き、スイッチを入れた。

 久川は、驚きの表情となり、顔色を変えた。

 「玉井君、これ、しかし、どうやって入手したんだ」

 「ある人からのタレコミです」

 「しかし、これは国家がひいっくりかえるかもしれない話じゃないか」

 「そうです、しかし、既に、我々の国は転覆しかけている、というか、蝕まれていますよね」

 そう言いつつ、玉井は続けた。

 「高田首相は、国会議員としての議員特権があるのですぐには逮捕できないでしょうが、土田長官については、できますよね」

 驚きの表情の土田を前に、玉井は続けた。

 「久川警視、すみません、ルーティンワーク的な仕事を続けさせられて、都内の署にいる<世界創世教>の2人の取り調べに参加さえてもらえなかった時から、私は不審なものを感じていたんです」

 さらに玉井は続けた。

 「警視、この情報は勿論、タレコミをしてくれた方が、原版を持っています。その方たちは、現政権と対立する野党第一党の<民主労働党>側に情報を提供し、現在の国会答弁の中で、近々、暴露すると言っています。それを受けての逮捕なら、確実というより、動かざるを得ないですよね。どうですか?」

 ここまで、確実な事件の

 <鍵>

となるものを提示されては、久川としても、まず、


 ・土田慎一 警察庁長官 逮捕


に同意せざるを得なかった。

 さらに、玉井が問うた。

 「警視、今回の事件は、国家の大事ということで、我々に捜査の主役的立場が回ってきましたよね。それが、毎日のルーティンワークって、どういうことだったんですか?」

 久川が観念したように、口を開いた。

 「土田長官は、私の大学の先輩でね。ある種の気心の知れた仲だったんだ。そこで、今回の捜査の件については、私が課長となっている公安課の方を主役とすることで、わざと、捜査を遅らせ、そして、玉井君も既に了解しているように、都内○○氏の署に拘留されている深沢辰美、相川雄造の2人とその背後にある<世界創世教>に責任をなする形での陰謀だったんだ。これについては、ある料亭での会食の際、わざと、捜査をおかしくさせるように言われものだったんだ」

 これについては、玉井も何かしら、刑事として既に察するものがあった。久川は、土田から袖の下を渡されていたのかもしれない。

 「警視、今の話は、私の中にしまっておきます。しかし、最早、捜査方針をそれこそ変え、逮捕せざるを得ないのはお分かりですね」

 久川は嘆息しつつ言った。

 「分かった。但し、土田長官がいなくなった後、捜査一課との関係をも修復しなければならないだろうから、捜査一課にも協力要請という形で、捜査の主役の地位を、一定程度、捜査一課にも出すかもしれない。一課はこのままだと、我々に手柄を奪われたと恨むかもしれない」

 「結構です、警視」

 「じゃ、国会答弁で暴露されるまで、私は平静を装わせてもらうよ」

 「はい、御願いします」

 「じゃ、話はこれまでにして、いつもの職場に戻ろう」

 「はい、警視」

 久川の呼びかけに応じ、玉井は席を立った。

 別室の中で、


 ・玉井-久川


の上下関係が、実質的に逆転したようなものであったものの、最後は、それでも、久川が、上司としての立場を守ったような格好となった。


12-3 暴露

 政治の現場、すなわち、国会では、通常国会が開かれていた。

 委員会では、予算が審議されており、

 <民主労働党>

の一議員が、首相の高田に質疑していた。

 「さて、首相、聞いていただきたいものがあります」

 そう言うと、彼は、持参のパソコンのボリュームを最大にし、ある音声を流した。

 「劉仁宏を殺害したのは<世界創世教>ということにしておけば、邪魔な劉仁宏を殺害したのは、我々じゃなくなるものね」

 「<外国人参政権>やら、何やら、定住外国人の人権を主張する劉仁宏は、我々、民政自由党政権にとっては、邪魔な存在だったのよ」

 「我々、民政自由党政権としては、経営者とか、或いは、新興企業家を含めて資本家の立場に立って活動する政党。である以上、それこそ、グローバル化の今では、労働者の労値は低く抑えた方が、経営陣には喜ばれる。そこには、定住外国人の低い労値は欠かせない。<外国人参政権>なんか、成立したら、それこそ、これまで低賃金労働者だった定住外国人の待遇改善への議論やら、政治的動きやらが、各地方議会等で起こるでしょう。そうなれば、我が党は、各地方での活動が苦しくなるかもしれない」

 「しかし、劉仁宏議員1人を殺したところで、<外国人参政権>への流れは止められますかね」

 「狙ってたんでしょう、<社会的効果>ってやつを」

 「そうよ、その<社会的効果>ってやつをね」

 「我々としては、勿論、外国人参政権は認められないし、外国人の人権を半ば制限する必要がある。もし、外国人参政権をはじめ、彼等彼女等の人権を認めたら、我々より<右>の<愛国誠民党>に勢力を奪われるかもしれない」

 「今なら、<外国人参政権>反対の世論も、一定程度、根強い。そこで、外国人の参政は、<社会>に何かしら、危険をもたらすという雰囲気を漂わせることが必要だったのよ」

 「この後は、所謂、<公式発表>ですな?」

 「そうよ、<公式発表>」

 「公式発表において、劉仁宏衆院議員を殺害したのは、都内○○市の署に拘留されている深沢辰美、相川雄造の2人が実行犯となった<世界創世教>の犯罪と発表される」

 「あそこに拘留されている2人は、確かに、世界創世教の教徒。この2人が、日本にはまだ、外国人参政権がないのを良いことに、そこにつけいって、勢力拡大をしようとしていたところ、<外国人参政権>によって、公式な政治参加のルートが開ければ、自身の勢力が脅かされると思い、<外国人参政権>の妨害のため、劉仁宏氏の殺害に及んだ、ということですな」

 「その通りよ」

 「その上で、日本でのが外国人の参政は社会に不穏なものをもたらすものであり、外国人への政治参加を制度として許す外国人参政権は、現時点では、時期尚早なので、許されないと主張することで、<愛国誠民党>に対抗すべきなのよ。そうすることで、票が流れるのを防ぐべきなのよ」

 首相の高田は、先日の料亭<H>での自身の音声を聞いて、顔面が蒼白になり、身体が小刻みに震えた。

 この姿は、いつものNHKをはじめとする

 <国会中継>

にて、東京のみならず、全国に

 <生中継>

される形となった。顔面蒼白なその姿は、テレビ画面を通しても分かる程のものであった。

 警視庁の食堂にて中継を見ていた玉井、或いは、佳華や料亭<F>にて、スパイ活動氏をしていた関係者には予測されたことであった。

 しかし、所謂

 <道行く人々>

にすれば、まさしく、

 <青天の霹靂>

という言葉さえ、甘い表現であろう、

 <政治爆弾>

の大爆発であった。

 東京では、渋谷、銀座、その他、大画面を持つビルの前に大きな人垣ができた他、人々は、すぐさま、自身のスマートフォンで、情報を確認し始めた。スマートフォンで、生中継が緊急放送として流され始めた。

 勿論、国会内は、与野党を問わず、動揺、困惑といった驚きの声となり、各議員による勝手な発言が乱れ飛び、最早、国会内は

 <雑踏>

と化しつつあった。

 「首相、どうなんですか」

 先の議員から、重ねて、質問の声が上がった。首相の高田は応答できない。彼女は滝にように汗が滴った。

 「只今、予想外の状況にあります。議長権限によって、暫く、休会いたします」

 日本各地のテレビ画面、スマートフォン画面等は、

 <暫く、お待ちください>

の字幕をとなり、中継は一斉に中断された。

 歩くのおぼつかなくなり、国会内の通路を廊下を秘書に抱えられて歩く彼女の前に、1人の女性刑事が現れた。

 「首相、国会答弁、お疲れさまでした。私、警視庁捜査一課の山城葵と申します。<劉仁宏氏殺人事件>の件で、お聞きしたいことがあります。任意でご同行いただけますでしょうか」

 最早、先のような

 <爆弾>

が爆発しては、拒むことはできなかった。高田を抱える秘書としても、刑事に対し、強い態度は示せなかった。

 「失礼します」

 高田を秘書氏から引き渡される格好となった葵は、同じく、高田を抱える格好で、国会前に乗り付けて来たパトカーの後部座席に高田を押しこみ、自らはそのまま、隣席に座った。

 他方、警察庁長官の土田は、楓をはじめ、他の捜査一課の課員によって、執務室内で緊急逮捕された。この件については、公安課長の久川から、捜査一課長の本山に事前に情報が届けられたことによるものであった。

 今回の逮捕劇のシナリオを書いていたとも言える玉井は

 「さて、これから、何が分かるか?」

 心中で呟くと、いつもの職場に戻った。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る