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「シャーミィ、この食材、美味しそうじゃないか?」
「そうやねぇ。毒もなかしいいもんだと思う」
マサルも何だかんだいって、《災厄の魔物》と呼ばれるシャーミィと共に旅をしている図太さを持っている。だからこそ、シャーミィの周りに魔物が沢山いて、それこそマサルでは太刀打ちできない存在ばかりだと分かった上で、すっかりもう怯えもなくなっている。
シャーミィが居ればどうにでもなると思っているのかもしれない。
そしてマサルは食材を見つけては嬉しそうに声をあげていた。
元々、異世界で美味しいものを作るというのをマサルは目標にしているのだ。美味しそうな食材を見かけると、嬉しくて仕方がないのだろう。その様子を見て、シャーミィも笑った。
キノコなどを採取し、きちんと毒がないことを確認してから調理する。キノコの吸い物や焼きキノコなど。そういったものを作る。香ばしい匂いがしてシャーミィはそのにおいをかいでいるだけでも何とも嬉しい気持ちになった。
シャーミィは食事を食べることが好きだ。
地上に這い出てきてから、色んなものを食べれることが本当に嬉しくて仕方がない。
「はぁ……うまかねぇ」
「そうだな。美味しいな」
「マサルが《時空魔法》もっとるけん、色々調理道具持ち運べるともよかよね」
「そうだな。こういう崖の下でも美味しいものが食べれるもんな」
「そうよ。こういう場所で食べれっと、凄かことやけんね。食事って生きていく上に凄く大事とよ。私、土ん中におった時、調理されたもの食べたくてしかたなかったもん」
人間としての記憶が深く刻まれていたからこそ、土の中で過ごしていてずっとご飯を食べたいとそればかりシャーミィは思っていたのだから。
「こういう人の手が入っとらんところは、食材も採取されつくしてなくてよかよね。この世界でもやっぱり採取しすぎて取れなくなった食べ物とかあるみたいだし」
「……まぁ、自然に生えているものだと採取され続けたらそうなるよな。シャーミィが居た土の中だとどういったものがあったんだ?」
「どういったもの……。土の中で生活している同族とか、あとはモグラとか、そういうのを土ごとまるごと食べるだけだったなあ。中々弱肉強食な世界やけん、土の中も大変なんよ。特になんもなかし。たまに魔力の塊みたいなのとか、宝石っぽい石みたいなのとかよくわからんものはあったけど」
マサルはそんなシャーミィの言葉を聞きながら、流石なんでも喰らうものだとそんな風に考える。
「石とかって美味しいのか?」
「美味しくない。硬いだけ。でもああいうのも、美味しく料理みたいなのはできっとかな」
「石を料理かぁ……。まぁ、シャーミィ専用料理として作ってみてもいいか。俺に味見は出来ないが」
「色々試してもらえれば私が味見も全部すっけんよかよ」
シャーミィがそう言って笑えば、マサルも笑った。
ちなみにシャーミィの周りにいる魔物たちにもマサルは食べ物を与えたりしている。魔物たちと一緒に食事をするのは何ともマサルにとっては不思議な気分になるものであったが、それでもシャーミィが一緒にいるので恐怖心もなかった。
(それにしても食べられないものでもシャーミィは食べられるから、シャーミィのために色々と試行錯誤してみるのも楽しいかもしれない。《デスタイラント》であるシャーミィにとって世の中で食べられないものはきっとない。《デスタイラント》は街さえも食べつくすようなそういう魔物らしいからなぁ。レンガとかそういうのでもいけるってことか……?)
マサルはシャーミィの本来の姿をそんなに見たことはない。ただ巨大だったこと、そして噂に聞く《デスタイラント》が何でも食べられることは知っている。
(……本当になんでも食べられるシャーミィのことを誰かが閉じ込めようとしてもどうする事も出来ないんだろうな。例えば屋敷とかに閉じ込められても壁を食べて出れるだろうし、何かがあって牢屋とかに入れられたとしても鉄格子も食べられるし。本当にすごい存在だ)
《デスタイラント》の魔人であるシャーミィの自由を奪うことは誰にだって出来ないのだろう。
そういうことを考えると、シャーミィという存在は凄い存在だとマサルは改めて思った。
それでいて《デスタイラント》は何だって食べられるので、餓死することだってない。そういう恐ろしい魔物だからこそ、《デスタイラント》は災厄の魔物などと言われて恐れられているのだ。
(シャーミィは人と敵対していないからいいけれど、人を餌としか思っていない《デスタイラント》は本当に恐ろしいのだろう)
そう思いながらマサルはシャーミィに問いかける。
「《デスタイラント》って、そんなに地上には出てこないって聞いているけれどシャーミィのほかに出てきそうなものとかいたのか?」
「さぁ? 会話とかも出来んし、わからんね。大体が地上に出てくるとか考えてもなかと思うけれど、でも出てくるものはおるんやろうね」
《デスタイラント》同士で会話など出来ないので、シャーミィにはそう答えるしかなかった。
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