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「どのくらいお金をとっておいた方がいいかって、まぁ、なるべく不測の事態に備えてとっておけるだけとっておいた方がいいとは思うけど」

「んー、そうやけど。食べたいものいっぱいあるんやもん!! ここって大きな街やけん、美味しかもんやまほどあったい? やけんさ、いっぱい食べたかと」

「それは分かる。美味しそうなもの沢山あるよなぁ」



 マサルとシャーミィは、どれだけお金をとっておけばいいかといった話し合いをしている。


 マサルもシャーミィもご飯を食べることが大好きなので、食べたいものが沢山あるのであった。



 お金というものは、無制限にたまるものではない。

 特にこの世界にやってきてそこまで長くないマサルと、魔物であるため人の世界にあまり関わって来なかったシャーミィなので、お金なんてそこまでたまっているわけではない。



「んー、いっそのこと、お金貯めるためになんか素材になりそうなの倒す?」

「シャーミィはそれを出来るだろうけれどもやらない方がいいだろう。それで目立ちまくったら絶対ややこしいことになるだろう」

「んー。じゃあ我慢すー」



 マサルとシャーミィには、大きな後ろ盾があるわけでもない。シャーミィはどんな相手だろうとも倒すことが出来るだろうが、高価な素材を売ろうとすれば大変な騒ぎになることは間違いなしである。

 そうなってしまえば、普通に二人が旅をすることも難しくなる。



(んー、となるとどんなふうにお金を貯めた方がよかかなぁ。順当にお金を溜めていくとするならば、マサルに商人として成功してもらうことかな。あとは私が偶然を装って魔物を倒すとか? ちょっとならば目立たんやろうし。その辺考えんとね)



 シャーミィはそんなことを思考する。

 正直言えば、お金は使ったところでシャーミィは困らない。ただお金がないと人の世で生きられないので、最低限はとっておくことにする。




 シャーミィは、マサルとそんな会話を交わした数日後に飲食店でアルバイトをしながら、どんな風にお金を稼ごうかというのを考えている。


 お金を稼げれば、マサルも旅がしやすくなるだろう。



「お金、稼ぎやすいものある?」

「……お金に困っているのか、シャーミィ」

「いや、違う。ただお金あったほうが旅しやすいから」



 シャーミィは職場の人に話を聞いていた。

 シャーミィがお金を稼ぎたいということを口にすれば、心配されてしまった。


「……となると、大会とかに出るとかになるが」

「大会って何があります?」

「狩猟の大会とか、商売の大会とか、あとは大食いとか」

「大食いあります? じゃあ、出たい」



 この街では、多くの大会が開催されているらしい。シャーミィはこの街にやってきて間もないため、そういう大会があることを把握していなかった。




(狩猟の大会も私ならいけるけど、それは保留やね。一先ず大食い大会は参加したか。私が参加すっとはある意味ズルっぽいけど一回参加してお金を稼ぐのもありやろ。一旦マサルに相談してからになっけど)



 大食い大会というのは、そもそも参加したいと考えていたものだ。一旦マサルに相談してから、大食い大会に参加することにした。





 どこで大食い大会にエントリーできるかなどを聞いておく。




「シャーミィが参加するのか? 此処の大食い大会には伝説と呼ばれるほどに食べる猛者もいるんだぞ? 無理じゃないか?」

「大丈夫です」



 シャーミィは、忠告を受けても全く持って負ける気はない。

 そもそも暴食の悪魔と呼ばれるシャーミィに勝てる存在がまずいるはずがない。



(大食い大会やったら、沢山のものを食べれるんよね。滅茶苦茶楽しみ。この街で有名なものとかでっとかなぁ。そう考えるだけでもわくわくすーね。それを思う存分食べられっとよね)



 シャーミィは仕事中にずっと、大食い大会のことを考えていた。

 

 美味しいものを食べることが大好きでたまらないシャーミィは、それを食べられると考えただけでも接客中に涎がたれそうになっていた。


 《デスタイラント》であったシャーミィは空腹に満たされることはない。それでも沢山ご飯を食べられるのならば、それはしあわせなことだった。





 シャーミィは仕事を終えた後、宿へと戻る。

 マサルがまだ仕事から帰ってきてなかったので、シャーミィはしばらくひと眠りして待つことにした。



 ぐっすりと眠ってしばらくして、シャーミィは目を覚ます。




「あれ?」



 だけどしばらく経っているのに、まだマサルが帰ってきていなかった。


 この時間だと通常ならマサルが帰っている時間だ。だけどマサルがいない。そのことにシャーミィは少し嫌な予感をしながら、宿の部屋から出る。



 そして一階に下りる。宿のカウンターにいた女性にマサルのことを問いかける。

 だけど「まだ見ていない」と言われ、シャーミィは宿から出た。



 外は暗い。

 まずは、マサルの働いている場所へと向かうことにする。暗闇の中、見た目は幼いシャーミィが移動するのは不自然だろうが、それでもなりふり構っていられなかった。





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