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「なんかおおきか街やねぇ」
「そうだな。活気も溢れているし、良い食材が手に入りそうだ」
「それにおいしか食事も絶対ありそうよね」
シャーミィとマサルの街へとたどり着いた第一声がそれである。
なんとも二人らしい。
沢山の人々が行きかい、多くの商店が立ち並ぶ。この街は織物が有名な街なのか、美しい織物の衣服を着たものもいる。
――だけど、そんなものよりも食事に関心が振り切れているのが、シャーミィとマサルの二人である。
何よりも食べるものが大好きで仕方がない。そういう思いが共通しているからこそ、シャーミィとマサルは種族が違えど一緒に過ごせるのかもしれない。
同じ種族であろうとも、性格が合わなければ一緒には過ごすことは出来ないものである。
(なんば食べようかなぁ。此処にはどがんものがあっとやろ? 考えるだけでわくわくすーわ)
きょろきょろとあたりを見渡すシャーミィは、何か美味しそうな匂いをかぎ取って、そのまま歩き出そうとする。
マサルの事を置いてそのまま歩き出したシャーミィの腕をマサルは掴む。
「シャーミィ、一人でずかずか歩いていくな。はぐれてしまうだろう。迷子になったらどうするんだ?」
「迷子にはならんよ! でもそうね、はぐれっとめんどうやね。よし、マサル、手をかしー」
そう言いながらシャーミィはマサルの手を握る。
はぐれないように、手を繋ぐことにしたらしい。そしてシャーミィはそのままマサルの手をひいて歩き出す。その歩くスピードは素早い。よほどシャーミィはすぐに何かを食べたいのだろう。
(少しスパイスのきいた香り! 香辛料の美味しそうな匂いがすると嬉しか気持ちになる!!)
シャーミィはそのスパイスのきいた美味しそうなかおりに、近づいていく。
「二つください!!」
シャーミィが左手でマサルの手をひいたまま、右手で2の形を作って二つほしいと屋台の店主に伝える。
そうすればその様子を見て、店主はにっこりと笑う。シャーミイの無邪気な様子を見れば、笑顔になるものなのだろう。あとはシャーミィが実年齢よりもずっと子供に見えるからというのもあるだろうが。
この店主はシャーミィが三百歳越えの魔物だと言っても信じることが出来ないだろう。
シャーミィはそれを受け取る。それは少しピリ辛のソースのかかった串カツのようなものである。魔物のお肉だろうが、どの魔物の肉かまではシャーミィは気にもしない。
シャーミィは例えばその肉が自分と同じ《デスタイラント》の肉だったとしても決して気にしないだろう。シャーミィは、暴食の悪魔などと言われているような魔物である。正直言って美味しければ何を食べても満足する。
ただシャーミィが人間だった記憶があるから人間を食べないだけで、言ってしまえば建物だろうが何だろうとシャーミィにとってはご飯である。
シャーミィとマサルは、人通りの少ない通りの椅子に腰かけて、それを食べる。
「んー。うまか!! なんだろう、このソースが良い味やね」
「そうだなぁ。滅茶苦茶上手い。こういうのも携帯食に出来そうでいいよな」
「うん。マサル、こういうのもつくって」
「ああ」
「材料は私が手に入れてくっけんね」
シャーミィはそう言いながら満面の笑みを浮かべる。
シャーミィは料理がそこまで出来ないので、自分が食材を手に入れてきたら美味しい料理をマサルが作ってくれると思うとにこにこしているのだ。
それからその場で食事をとった後は、宿を探した。
沢山の人々が訪れてるこの街では、宿がかなり埋まっていた。どうやらそのうちちょっとした催しがあるらしく、その影響もあるのだという。シャーミィとマサルは全くそういう催しを知らずにやってきたが、魔物使いと呼ばれる人が芸をするらしい。
魔物使いと呼ばれる者たちは、魔物と心を通わせて、魔物と共に生きている者たちである。ちなみにだが、もちろん、《デスタイラント》を従えている魔物使いはいない。
シャーミィとマサルは、ようやくとれた宿でその話を聞いた。
「シャーミィ、見るか?」
「うん」
魔物である身なので、そういう魔物使いとそれと共に生きている魔物にもシャーミィは興味を抱いているようである。
シャーミィは自身も魔物であるが、敵対する存在は躊躇いもせずに食べる。仲間意識というのはない。そういう人と過ごしている魔物であるのならば、もしかしたら仲良くもなれるかもしれないが……。それはまぁ、会ってみなければわからないものである。
ちなみに宿の部屋は相変わらず一部屋である。
シャーミィは、ベッドに横になってこれからどれだけ美味しいものを食べられるだろうかと満面の笑みを浮かべている。マサルはそんなシャーミィを放っておいて、宿で働く人たちにこの街の見どころなどを聞いていた。基本的に食べ物の話ばかりしているようだ。
シャーミィも、マサルも何処にいようとも相変わらずである。
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