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それからの二人の道中は、概ね平和に進んでいった。
時折魔物が現れたり、気になる山菜をマサルが見つけてそちらに夢中になってしまったり――ということはあったものの、特に命の危険を感じるような問題はおこることがなかった。
最も魔物に関しては、シャーミィという強大な力を持つ魔物が近くにいるからというのもあって、ほとんどの魔物はシャーミィに近づくことがなかったわけだが。
そんなこんなでシャーミィとマサルは、魚を食べられる街を目指して移動をする。そんな二人が次に訪れたのは小さな村だった。そこで聞き込みをしながら海に近い街はどのように移動して向かえばいいかというのを知る。
その距離は普通に進めば何か月かかるかもわからない。それはこの世界が地球に比べて交通機構が発達していないからというのがあるだろう。
「やっぱ遠いんだな」
「普通に歩いて、何か月かかかるんやね。マサルを背負っていった方がはやかかもしれん」
「いや、それは却下」
普通に歩きの移動をすると長い時間がかかるというのを知ったシャーミィが真っ先に告げた言葉は、背負おうかというその台詞だった。
シャーミィが背負って駆け上がった方が確実に普通に歩くよりははやくつく事だろう。しかし、それは勘弁したいマサルであった。
魚をはやく食べたいマサルとシャーミィは、馬車などを上手く使って移動することにした。幸いといっていいのか、マサルが魔物の解体などを手伝ったり、シャーミィが物を運ぶといったことの手伝いをすることで、無料で馬車に載せてもらうことも出来たのだ。
加えてマサルが美味しい料理をふるまったりするので、そのこともあって快く乗せてもらえた。
ただ馬車の移動は歩きよりも楽だが、良いことばかりではない。
「……痛い」
「仕方なかね。長時間のっとったし」
初めてシャーミィとマサルが馬車に乗った時――ラドに馬車に乗せてもらった時は、短距離だった。なので気にすることもほとんどなかったのだが、今回は長時間、馬車に乗っている。
魔物であるシャーミィはともかく、こんなに長い時間馬車に乗ったことが初めてであるマサルは疲労困憊していた。
「シャーミィは全然平気そうだな……」
「私はこんくらいは全然平気よ」
何でシャーミィがこれだけの揺れを平気なのかと言えば、土の中でもっと揺れるような移動をしていたからである。なんせ、シャーミィの本体は驚くほどに巨体である。その巨体で一気に土の中を移動するのだ。それもうものすごい衝撃である。
時折土の中の魔物にぶつかったりしながらも過ごしていたのだ。それに比べれば馬車の移動ぐらいはなにも感じなかった。
人の姿をしているとはいえ、その身体の本体は丈夫な魔物なので馬車の揺れぐらいで痛みを感じることもない。
というわけで、馬車から降りたマサルが疲れ切っているのと対称的にシャーミィは元気だったのだ。
「マサル、休憩してからいく?」
「そうだな。ちょっとすぐには無理かもしれない」
「了解。やったらせかさんけん、ゆっくり休まんと」
マサルはシャーミィの言葉に甘えて、一旦、座れそうな場所を見つけて座り込む。
二人が馬車をおろされた場所は、とある街の郊外である。そこに馬車の降車場があったのだ。
マサルとシャーミィが日本語で話しているからか、周りから注目を浴びている。
(そう考えると俺は勝手に翻訳されているけど、シャーミィは使い分けてるんだよな。日本語と、異世界の言葉を使い分けてるんだよな。そう考えるとシャーミィって頭の回転ははやいということだよな)
マサル自身は、勝手に言葉が翻訳されるので何も問題はないのだが、シャーミィはマサルと話す時と異世界の人々と話す時で使い分けている。そのことは純粋に凄いとマサルは感じてしまう。
そもそも、異世界の言葉を短期間で覚えて、使い分けられるだけの能力があるのにこれまでそういう言葉を覚える機会が一切なかったのは本当に不思議だとマサルは思う。
(自分が魔物だとはぐらかすぐらいだし、よっぽどつらい目に異世界であっていたんだろうな)
そんなわけでマサルは勝手にそんな風に結論づけていた。
魔物であるというのが真実なのだが、やはりマサルの目の前にいるシャーミィは愛らしい少女でしかないので、信じていないのであった。
「なん、みよっと?」
「んーなんでもない」
言いたくないのなら、シャーミィの過去を探ることはやめようとマサルはそう答えるのだった。
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