第四話 災厄の魔物と転移者は大豆を探す。
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「マサル、魚ある方にいきたかよね?」
「そうだなぁ。魚がある地域だともしかしたら醤油自体もあるかもしれないし。なくても作るだけだけど……」
「うんうん。そうやよね。魚も食べたかよね。私土ばっかりたべとったけん、お肉食べれるだけで嬉しかけど、それでも魚もやっぱり食べたかもん」
「お、おう? そうか」
マサルとシャーミィは、街道を歩いている。
並んで歩く二人は、仲睦まじい様子である。
マサルは土ばかり食べていたという発言を聞いて、不思議そうな顔をしながら頷いた。
……ミミズの魔物であるシャーミィが土ばかり食べていたのは事実であるが、そんなものマサルには想像も出来るはずがない。
マサルとシャーミィの距離は、ガーヒアの暮らしの中で縮まった。なので二人の話は終始穏やかである。
マサルは相変わらず体力が低く、息切れを起こしているぐらいが問題だろうか。
ガーヒアの街でマサルは、食堂で立ち仕事をしていた。しかし、立ち仕事で使う筋力と移動で使う筋力は違うのである。
対してシャーミイはその本性が魔物であるのもあって、体力には自信があった。
「本当に……シャーミィは体力あるよな」
「そうやね。私は幾らでも歩けるよ。もしマサルが限界やったらいってね。言ってくれたら背負うけん」
「いや、背負うのは流石に無理じゃないか?」
マサルとシャーミィは、舗装された道を歩きながらそんな会話を交わす。マサルに無理だろうと言われて、シャーミィはムスッとした表情をする。
シャーミィは、侮られることが嫌なのだろう。マサルの方を振り向いて言う。
「なん、そがん言うならやってみっけん」
「え、シャーミィ?」
マサルがシャーミィの言葉に何を言っているんだ? といった表情を浮かべる。そんなマサルの声など聞きもせずに、マサルの腕を取って背負う。
「おおおおお⁉」
シャーミィよりも大きなマサルの体を軽々と背負う。しかもマサルの背負っている荷物分だけ重いというのにシャーミィは気にした様子もない。背負うだけに飽き足らず、歩き始めている。
大の大人を一人背負い、そしてこれだけ動けるというのは異常の一言に尽きる。
それもシャーミィが長く生きてきた魔物だからこそできる所業である。
「シャ、シャーミィ。重いだろ、降ろしてくれ。背負われて歩くというのは落ち着かないし、俺はまだ歩ける」
「重くはなかよ。こんくらいやったら幾らでも背負える。やけん、疲れたら幾らでもいってくれてよかけんね」
シャーミィはそう言うと、マサルのことを地面へとおろした。
マサルはシャーミィが自分のことを地面に降ろしてくれてほっとしていた。このまま抱えられたまま街に到着なんてことになったらどれだけ恥ずかしい思いをするか分からなかった。
男として体力が無くなったからと自分よりも小さな女の子に背負われて移動なんて、恥ずかしくてマサルは嫌だった。
「そがん、背負われたくなかと? 楽やと思うけど」
「いや、普通に恥ずかしい!」
「ふぅん、そうなん?」
元人間とはいえ、魔物としての人生の方が圧倒的に長いシャーミィは色々と感覚が普通とはずれていた。
そんな人とはどこか感覚の違うシャーミィのことをマサルは不思議な気持ちで見てしまう。シャーミィという少女は何処までも不思議なのだ。この世界でどのように生きてきたのかもさっぱり想像が出来ない。
マサルよりもこの世界に長くいるはずだというのに、この世界のことを知らない。言葉も通じない地域にいたというのも不思議だし、このような力を持っているのも不思議だった。
(魔物だとか冗談いっていたけど、いつか本当の出自を話してくれるだろうか)
シャーミィが魔物だと言っていることを全く信じていないマサルは、そんなことを考えるのであった。
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