11

 出発はそれから四日後となった。



「今すぐ出て行こうと思うのだが」

「いや、まだ駄目だ!!」

「シャーミィを守るためにももっと強くなってもらわないと!」



 マサルはすぐにでも旅に出ようとしていたのだが、騎士団の騎士達がシャーミィを守れるように鍛える! シャーミィが大変な目に合わないように準備をする! と言い張ったせいであった。

 チート能力を手に入れているとはいえ、戦闘系の能力ではない。とはいえある意味チート能力なのはチート能力である。

 地球で読んでいた小説のようになんとなるのではないかという思いもそれなりに大きかった。しかし、それを彼らに言う気もなかったので、大人しく騎士団の人達との模擬戦などを行っていた。



「マサル、そんなのではシャーミィとの二人旅など難しいぞ」

「シャーミィが危険な目に遭うのは困るぞ」



 ちなみにマサルに関しては、剣をそこまで触れるわけもない。

 元々料理人として活躍をしていて、戦闘なんてしたことがないのでマサルは疲弊している。


 その様子に騎士の者たちは、マサルと一緒でシャーミィが大丈夫なのだろうかと心配しているようだ。



しかし、


「私も混ざる!!」



 といってシャーミィが混ざったことによって、騎士たちの心配は杞憂に終わる。



 というのもシャーミィは驚くほどに軽々と長剣を振り回していた。



「思ったより、かるかね!!」


 シャーミィはにこやかに笑って、剣を振り下ろす。騎士達に混ざって長剣を振り回していても疲れを一切見せない。

 


「模擬戦、私も混ざる!!」


 模擬戦に参加したいと意気揚々とシャーミィが飛び込んで、シャーミィは騎士たちにさえ遅れを取ることない動きを見せていた。

 剣技としての型はそこにはない。洗練された動きはない。いかにも、剣を使ったことがない動きであるが、それでもシャーミィの動きは軽く、身体能力が高いためか良い動きをしていた。


 

 明らかにマサルよりもシャーミィの方が動きが良く、強いというのが一目でわかるものだったので、騎士たちもマサルも驚いたものである。




「シャーミィは凄いな」

「あんなに小さな身体でどうしてあんな風に動けるのだろうか」



 周りはシャーミィのその動きにそんな反応を見せていたものの、言葉もまともに喋れなかった少女に詳しく過去の事を聞くものはその場にはいなかった。


 シャーミィがそんな調子なので、逆にマサルは「男ならもっと頑張れ」と励まされながら、ひぃひぃ言いながらなんとか四日間を過ごしたのであった。

 その間シャーミィはいつもご機嫌で、マサルは常に疲労していた。



 そして四日後。




「行ってらっしゃい!」

「手紙を書くのよ!」

「近くまで寄ったらこいよ!」


 シャーミィとマサルは騎士たちに見送られて街を後にしようとしていた。


 騎士団の詰め所でシャーミィと関わりのあった者たちはほとんど来ていた。

 それも彼らがシャーミィの事を心から可愛がっているという証であろう。シャーミィは彼らが自分を見送りにきていて嬉しかった。



 騎士団の者たちは、皆が笑顔でシャーミィとマサルのこれからの旅に幸福があことを――と祈って送り出す。




 そんな騎士達の見送りの声を聞いて、



「「いってきます!」」




 一人と一匹は旅立つのであった。




 最も、その少女が災厄の魔物である事を男はまだ知らない。


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