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「美味しかった。ありがとう。マサル!」
肉じゃがを食べ終わったシャーミィはそれはもう嬉しそうな花が咲いたような笑みを浮かべていた。それだけマサルの料理が気に入ったのだろう。
それも当たり前と言えば当たり前だ。マサルは把握していないが、シャーミィはずっと土の中にいた。
人と同じ食事を取る事も出来なかった。人としての記憶、地球で生きてきた頃の記憶を持ちながら人と関わらずにシャーミィは生きていたのだ。
シャーミィは人と関わる事に餓えていた。そして前世から食事を取るのが好きだったのもあり、食事をする事に餓えていた。
そんな状態で前世の記憶にあるような食事を出されてしまえば、歓喜するのは当然であった。
(美味しか料理が食べれて幸せやねぇ。土から出てきて人の食事を取れるだけでも嬉しかったけれど、やっぱり日本の料理っぽいもの食べれると嬉しかし。久しぶりに故郷の味が食べれたし、土の中から出てきて良かった)
シャーミィは土の中から出てくるという選択をした自分を褒めたくなっていた。
地中奥深くで生まれ、自分を食らおうとする魔物も多くいる中でなんとか生き延びたシャーミィは、ある時から地上を目指した。
―—その道のりは決して簡単ではなかった。今でこそ、本体は巨体で、大きな力を持ち合わせているが、生まれたばかりのシャーミィはもっと小さかった。人としての思考を持ち合わせていたからこそ、なんとか試行錯誤して生きてこられたが、それはもう大変だったものである。
途中で中々地上に辿り着けずに諦めそうにもなった。
途中で何度も死にかけた事もあった。
(だけど、地上にこれたからこそマサルに出会えてこがんおいしか料理を食べることが出来た。なんて幸せな事やろか)
こんなにも美味しい料理をまた食べれたのだと思うとシャーミィは嬉しくて、幸せで仕方がない。
そんな風にあまりにもシャーミィがマサルの食事を嬉しそうに食べるのもあり、騎士団の者達は思わずマサルに「シャーミィに食事を食べさせてほしい」と頼んだぐらいである。それを聞いてマサルは了承をした。
同郷の出であるシャーミィが言葉も通じず、日本で食べ親しんでいたものを望んでいる事を放っておけないと思ったからであった。
「シャーミィ、また料理を振る舞ってやるよ」
「ほんと!? ありがとー!! めっちゃうれしか!!」
シャーミィがそれを聞いて、それはもう喜んだのは言うまでもない。
それから、マサルはシャーミィに対し、様々な料理をふるまった。
時には焼きそばを、時には、お好み焼きを、時にはとんかつを――。
とはいえ、すべて日本で存在したものと同じわけではない。調味料なども少なからず違うので、同じ味には出来ていないが、似ているものでもシャーミィは喜んでいた。特にとんかつはお気に召したらしく、何度も注文していた。
ちなみにそれらの料理に関しては詰め所で働いている騎士たちにも振る舞われた。
騎士たちもそれらの料理を気に入ったらしく、沢山食べてくれていた。
材料に関してはシャーミィを喜ばせるためにと、騎士達が購入してくれたものを使っていた。
ついでに言うと、その料理を気に入った騎士がお金まで対価として渡してくれたので、マサルにとっては喜ばしいことであった。
此処に送り込まれる時に神から最低限のお金はもらっているものの、それはしばらく生活をすればすぐになくなる程度だったのだ。
そしてマサルがシャーミィに言葉を教え、料理をふるまう日々は三週間ほど続いた。
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