第6話被害状況

●被害状況


 夜が明けると入り込んだ死人とその死人に噛みつかれた人間たちが地面に並べられた。全員に息はなく、死んだ人間の人々の近くでは友人たちが泣いていた。悲しい光景であった。

思わず、ササナはユキを抱き寄せる。今は、温もりが欲しかった。


「……ユキ。昨日は助かった」


「なんてことないよ。兄さんたちも手伝ってくれたし」


 狼たちは死人たちがいなくなると消えていた。どうやら、人間たちの巣には長居したくないらしい。


「それにしても、どうして門が開いていたんだ」


 冬の夜間に見張りはたてない。


 雪が降り積もっていると外から人間が入ってくることはないからだ。


「うお……」


 悲しみに沈んでいた人々のなかで、一人が倒れた。


倒れた女はのたうち回り、全員が女から離れる。彼女は噛まれていたのだ。彼女の苦しみはすぐに終わり、やがてゆっくりと立ち上がろうとする。だが、そのまえに彼女の後頭部に刀が突き刺さった。


「おやすみなさい」


 その刀は、イツキのものであった。


 彼は女から刀を抜き、その血をぬぐう。


「……皆さん、死人は村の外へ捨てて焼きましょう。亡くなった方は墓地へ。けが人は、私のところに来てください」


 ササナは、チヒロの元へと足を運ぶ。


「お前ら、付き合ってたんだな。いつからだよ」


「……お前が出て行ってすぐ。ライバルが減ったからな」


 チヒロは、シニカルに笑った。


「意味ないよな……」


 ぼそりとチヒロは呟く。


「俺たちのご先祖さまは、地球を支配してたのに。今の俺たちは、こんなにあっという間に死んで。こんなの生き残っている意味はないだろ」


 自暴自棄になったチヒロに、ササナはかける言葉が見つからなかった。


 愛情を持った人間が死ぬのは、辛いものだ。ササナも、辛かった。ヒガシに恋愛感情はないが、昔なじみの一人であることには変わりない。


「門を開けた人間に復讐してやりたい……」


「じきに原因がわかるさ」


 こんな言葉しかかけられない自分は無力だ、とササナは思った。

 

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