能力にも、拒絶された勇者
『
別の世界にある物質を転移召喚する能力。
その際に質量の制限はまったく無く、
無尽蔵に転移させることが可能。
いわば規格外の能力。
そこから派生した転移系の能力もまた
すべて等しく禁忌の能力として、
神々の力によって制限されている。
「『転移強奪』の能力よ、
まだ私を拒もうと言うのか?」
勇者は『転移強奪』の能力を使って、
元居た人間世界から、
この異世界には存在しない筈の
物質を呼び出して、
環境破壊、汚染行為を繰り返していた。
だが、まだその能力が秘める真の力、
その十分の一も力を発揮出来てはいない。
そして、そこから派生した
転移系能力もまだ使えてはいなかった。
「『転移強奪』は
その持ち主を選ぶと言う……
つまり、私はこの能力にすらも
拒絶されてしまったということか……」
勇者は、女神アリエーネに
異世界に転生することを
拒絶されてしまった過去を思い出す。
「だが、まぁいい……
今回も無理矢理、強引に、力づくで、
その能力を引き出させてもらうとするさ」
「私はね、元々
自分が何者であったのか、
もう少しで思い出せそうなんだよ……
もしその記憶の欠片通りだとするならば、
きっと私なら神々の封印すらも
解くことが出来る筈なんだ」
「そう、そもそも、
あの時、あの場所で、
無理矢理、強引に、力づくで、
私はすべての能力を
インストールしているのだからね」
そう、この勇者は最初に
転生システムに自らをコネクトさせて
転生管理センターにあった
能力のすべてを取り込んでみせた。
それを考えれば、彼にとって、
そうそう不可能なことなどは
無いのかもしれない。
自らの体内に
インストールされている筈のデータ、
それにアクセスしてプロテクトを解除する。
デジタルの世界であれば、
分かりやすいことだが、
勇者はそれを物理的な肉体と精神で
やってのけようとしているのだ。
「強引に、力づくで、
というのは嫌いじゃあない……」
-
魔王が勇者を見つけた瞬間、
とほぼ同時に、それは起こった。
――この世界の破滅の瞬間
暗雲が空を覆いつくし、
同時に浮かび上がる無数の紋様。
それが、異なる世界同をつなぐゲート。
『
その空に位置する紋様を通過し、
次々と巨大な隕石が地上へと降り注ぐ。
地上にいるすべての生命はみな
空を覆い隠す程の、
その巨大な塊を見上げ
死を覚悟する他、術はない。
大地は割れ、地中はえぐれ、
膨大な量の粉塵が空を舞う。
海が荒れ、大津波が
陸を呑み込んで行く。
誰の上にも平等に、
等しく死は降り掛かる。
勇者と魔王を除いては。
–
「クッ、遅かったかっ……」
巨大隕石が降り続ける中、
魔王は勇者の前に降り立つ。
「もう少し早く
貴様を見つけることが出来れば……」
勇者はそんな魔王をあざ笑った。
「魔王、どうやら君は
何か勘違いしているようだね
君がね、
僕を見つけたんじゃあないんだ
僕がね、
隠れる必要が無くなった
ということなんだよ」
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