第13話
《尚輝視点》
俺は結希と二人で帰路について、結希は相当落ち込んでいた。
「高梨……相当参ってたな……」
「うん……悪いことしちゃったかな……」
今にでも泣きそうな表情をしていて、結希らしさが見て取れた。
俺は結希のそういう優しいところが好きだ。
「達也が決めたことだ、結希は悪くない」
そういって結希の頭を優しく撫でていた。
「んっ……なおくんの手おっきい……」
結希は幸せそうに目を細めて、撫でている手を触っていた。
「あっ……悪い、つい」
俺は咄嗟に手を離した、すると結希は少しだけ寂しそうな顔をして俯いていた。
「……なおくん」
「ん、どした?」
俺の服の袖をぎゅっと摘まんでいた。結希の緊張が伝わる。
「結希?」
「わ、私ね――」
「んんっ、大変申し訳ないのですが……」
「「うわあ?!」」
俺達は慌てて振り返る、するとそこには綺麗な女の子が赤く頬を染めながらこちらを見ていた。
「れ、怜奈ちゃん?!な、なんでここに……っていうか来るの来週辺りのはずじゃ……?」
「お久し振りです、結希御姉様」
結希に向かってお辞儀をしている女の子、どーっかで見たことあるような……。
「結希、この人は?」
「えーっと、紹介するね……こちら飯嶋怜奈さん、達也と同い年で婚約者」
飯嶋……飯嶋……あ!
「飯嶋って、あの飯嶋グループの?!」
「あら?ご存知ですの?」
「知ってるも何もあの藤崎裕貴の息子だよ!いやーここで飯嶋グループのご令嬢に出逢う、なん、でっ?!」
背後の危険を感じて咄嗟に振り向くも時既に遅し、結希が不機嫌になり、おもいっきり足を踏まれる、これが結構痛い。
頬を膨らませながら、プイッとそっぽ向かれる俺だが踏まれた衝撃が強すぎて一瞬折れたかと思った。
そして気付いたら結希とそのご令嬢が居なくなってた。
「は、ははっ……やっちまったな俺……はぁ」
痛い足を引き摺りながら、後を追った。
☆
「ただいまー……」
「おかえりー、ってどうしたの?その足?」
「結希におもいっきりやられた……」
何故か心が痛い、俺なにか気に触るようなことしたっけな……。
それを聞いた母さんが、何故か俺に向かって溜め息。
「尚輝?あんた結希ちゃんになにかやったでしょ?」
「は?いやなんもやってないって……」
「はぁ、結希ちゃんも大変ね……」
そのままリビングへ戻っていく母さん。
「え?全然心当たりがねえんだけど……」
ていうかなんで母さんまで結希の味方に……?
原因が分からない為、結希に聞いてみることにした。
そしたら
『なおくんのバーカ!もう知らない!』
と吐き捨てられた。
俺は結希に嫌われた気がして、心に大きな穴がぽっかり開いたような感じがした。
「……明日ちゃんと謝ろ、許して貰えるかどうかわかんねえけど」
今は何も考える気力がない、自室のベッドにダイブする。
「結希ー……」
ヤバイ、本気で泣きそう。
一方その頃……。
「なおくんのバカ……鼻の下なんか伸ばして」
昔誕生日に贈ったぬいぐるみを抱き締めながら、ぷくーっとリスのように頬が膨れていた。
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