第11話

《結希視点》


 なおくんが代わりに達也を追ってくれている間、私は遥香と一緒に桃花ちゃんと昼食を取っていた。


「ごめんね、うちの弟が」


「結希先輩……なんでああなったのか、理由知ってますよね?」


「まあ姉弟だし、知らないことは少ないかな?」


 私がそういうと桃花ちゃんは物凄い視線で私にこう言った。


「お願いします!どうしても知りたいんです!」


「結希私も気になる、中学の時と全然印象違うからさ」


 私はあえて縁談の話を伏せ、変わった理由を簡潔に話した。


「そう……ですか」


 その話を聞いた桃花ちゃんは驚いて、相当落ち込んでいた。


「でもどうして達也くんがあんな口調に?」


「イメチェンなんじゃない?ほら、達也って元々が引っ込み思案でしょ?だから自分を変えたかったんじゃない?」


 本当は婚約者として、色々と教育を受けた結果なんだけども。


「にしては変わりすぎのような……」


「は、はい!この話終わり!そ、そうだ!桃花ちゃん去年の事教えてよ!」


 私は慌てて話を逸らす。

 遥香は無駄に勘が鋭いから、この話そのものが嘘だってバレてる?


「結希、後で細かく教えなさい」


 やっぱりバレてるううううううう!!




 ☆




 そして放課後、私となおくんは二人で帰ろうとしていた時だった。


「ちょいちょいお二人さん、久しぶりにどっか寄ってかない?聞きたいこと色々とあるんだけど」


「それって桃花ちゃんも一緒、だよね?」


「そゆこと、じゃあ行きましょ?」


 私達は近くの喫茶店で昼休みの件について話し合う事に。


 なおくんはいつもと違って弱々しく、私にこう聞いてきた。


「結希、達也から色々と聞いた……」


「そっか、ごめんね今まで黙ってて」


 本当はなおくんに相談したかった、それで想いを告げたかった、でも実際は出来なかった。

 けど私となおくんの二人で話を進めたせいで、遥香がじっと睨んできた。


「二人だけで話進めない、私達何の事かさっぱりなんだから」


「じゃあ桃花ちゃん」


「はい?何でしょうか?」


「今から言うことに驚いても決して怒らないでね?」


 私はそういうとなおくんはより一層表情が固くなり、それが桃花ちゃんや遥香にも伝わり、一瞬の静寂が訪れた。


「達也には同い年の婚約者がいるの」


「えっ……」


「去年の五月頃に話が来て、夏休みに正式に決まったの」


「それってどういうことよ?まさか結希も?」


 遥香は弟に来たなら姉の私もかって言い寄ってきた。


「当然私にも来たけどちゃんと断ったよ?」


「そう……」


「あと今は相手の方は別の学校にいるけど、近いうちにこっちに来るって聞いてる」


 それを聞いた桃花ちゃんの顔は酷く参っていた。


「高梨……あいつを責めないでやってくれ」


「なおくん……」


 達也から事情を全て聞いているなおくんは、桃花ちゃんに頭を下げていた。


「先輩顔、上げてください……責めるわけ、ないじゃないですか……達也が決めたことなんですよね?だったら私は、受け、入れ、るしか……」


 桃花ちゃんの目には大粒の涙。

 知らぬ間に話が進んでいた事実、もう想いが届くことがない事、伝えられなかった悔しさ。


 啜り泣く桃花ちゃんを前に誰も何も言えなくなってしまった。

 私はこの時に、もし受けていたらなおくんも同じような目に遭うのかと考えてしまい、気付けば怖くなってた。

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