第8話

《尚輝視点》


 お互いの両親が共に出掛け、残された俺と幼馴染であり好きな人である結希、その弟の達也と一緒に夕食を取った。

 達也はテレビに夢中になっていて、俺と結希とで洗い物をしていた。


「足、大丈夫か?」


「うん、湿布貼ってるから」


「後は俺がやっとくから、結希も――」


「大丈夫……大丈夫だから」


 満面な笑みでそう答える結希、でもその表情とは裏腹に立ってるのがやっとなぐらいだった。

 無理するなって言おうとしたけど、結局言えなかった。





 ☆





 片付けも終わり、時刻は二十二時。

 俺は達也と同じ部屋で寝る準備をしていた。


「……なおにい、今日なんかあった?ずっと浮かない顔してるけど」


「えっ?ああ、なんでもない……ちょっと考え事」


「……姉さんの事?」


 痛いところを突いてくるな……流石にバレてるか。


「……前みたいに話せるような関係に戻れたのは良いんだけどな」


「早く付き合っちゃいなよ?お似合いだし」


 でも幼馴染という関係が邪魔をしていて、なかなか言い出せない状況になったのも事実。

 結希はどう思ってるんだろうか?幼馴染のままなんだろうか?


「今年のうちに告白しないと、ずっとこのままかお互い別々な関係になっちゃうよ?」


「分かってる、んだけど……」


「だけど?」


 俺は少しだけ顔を下に向け、小さな溜め息をついた。


「結希ってほら、モテるから……自信無くて……」


「へたれ」


 ぐっ……!反論できない……!




 ☆





《結希視点》


 今日は色々ありすぎた、なおくんが格好良かったことしかちゃんと憶えてない。


「えへ、えへへ……おっと、よだれが」


 今物凄いだらしない顔しちゃってるかも?

 あの時のなおくんは普段とは違うなにかを感じ取った。


 今の私にはそのなにかが分からない、幼馴染としてなのか、もしくは一人の女の子としてなのか。

 もし前者なら数日寝込むぐらい落ち込むけど、もし後者だったとしたら私期待しちゃっても良いのかな?


「考えても仕方ない、明日も学校あるしさっさと寝よっと」


 私はそのまま布団を深く被った。




 ☆




 翌朝、何時ものように目覚めた私だけど、目の前になぜかなおくんがいた。


「おはよ結希」


「~~~~っ!お、おは……よ」


「朝御飯出来てるからすぐ来いよ?」


 私は小さく頷いて、なおくんが部屋から出ていくのを見送る。


「み、見られた……?寝顔を……?」


 再度顔がかーっと赤くなっていくのが分かった。

 こんな調子で私大丈夫なのかな~?!

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