雑誌記者の話

 ――S氏の朝は早い。まだ太陽が昇る前から活動を開始する氏の一日の始まりは、ビジネスパートナーであるM氏との打ち合わせである。


「早起きする理由? そんなの決まっているじゃないですか(笑)、早起きは三文の得だって言うでしょう?」


 ――M氏はS氏と『協力関係』を結んでいると言う。その件についてS氏に質問をぶつけてみた。


「僕は彼から得るものがある、そして彼もまた僕から得るものがある。ウィン=ウィンの関係と言えばわかりやすいですかね? ギブアンドテイクは時代遅れの発想ですよ。これからは互いに利益を得るビジネスモデルを構築していかなければ」


「何故彼と組むようになったのか? うーん、そうですね(しばし黙考)、最初は敵対関係にあったと言うと驚かれますか?」


 ――なんと、S氏とM氏は敵対関係にあったと言う。それが何故現在のような関係になったのか。その経緯を聞くと、S氏は笑ってこう答えた。


「単純な話ですよ。敵対関係になった直後に、お互いがお互いの不足を補い合えると気付いたからです。そう思えば最初に対立したことに感謝ですね(笑)、あの出来事がなければお互いにお互いの存在を知らないまま、今のような関係になることもなかった訳ですから」


 ――そう語るS氏の表情に、偽りはない。S氏は穏やかな笑みを浮かべたまま、次のように語った。


「それに、彼とはビジネスだけではなくプライベートでの付き合いもありますからね。今やこの業界で彼程僕のことを知っている人はいませんよ、その逆も然りですが。こんなことを言うと彼女に怒られてしまうかな」


 ――M氏にはライバルと呼べる存在がいる。それがS氏曰くの彼女、A氏だ。A氏はM氏と同じ分野の研究者であり、M氏とは全く逆のアプローチからその研究を進めていると言う。


「世間ではライバルとか、それこそ敵対関係だと言われていますが……彼女にとって彼は憧れの存在であり、だからこそ超えたいと思ってがむしゃらに進んでいるんですよ。とは言え、彼にとって後輩が追い上げて来ると言うのはあまり面白いことではないと思いますが(笑)」


 ――そう言って笑うS氏は、M氏との打ち合わせを終えて巡回へと向かう。S氏はM氏の仕事に協力するだけではなく、治安維持のための活動もしているのだ。S氏が道を歩いていると、すれ違う人々は頭を下げる。しかし、S氏がそれに反応を返すことはない。


「決して彼等を軽んじている訳ではないです。僕から声をかけると彼等は萎縮してしまうので(悲しげに首を振る)……それは僕の本意ではないので、彼等からの挨拶は受けますが反応を返すことは自重しています」


 ――何と高潔な精神だろうか。S氏は昼過ぎまで治安維持のための活動を続ける。昼食は最近流行の











(以下、記事はどす黒い液体で染まっているため読むことは出来ない)

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