ツジ君の話

 サイエ先生の頭が転がってた。ムリヤリひきちぎったみたいで、ツナギメはぐしゃぐしゃだ。半分より多めに、たくさんの穴が開いているから、たぶん、銃でバンバンってされたんだと思う。でも、こんな風にしたヤツはカワイソウだな、とも思う。サイエ先生の目はそんな風でも開いてたし、きっとソイツのことを覚えていて、何日かしてから同じ風に仕返しに行くんだろう。

 ジゴク、と言うらしい、ここのルールはわかりやすい。食べ物とか、服とか、そう言うのは何となくほしいなって思ったらどこかから出てくる。そして、どんな死に方をしても、何日かしたらどこからか生き返ってくる。それだけだ。

 後は、タイザイニン、と呼ばれてるヤツらについて。オレもだけど、生きてた時にとても悪いことをしたヤツらにはすごい力が宿っている。オレの力は、とにかくすごく強いってこと。生きてた時も強かったけど、ジゴクではもっと強くなった。

 けど、そんなのはオレだけじゃないし、オレがこの力でたとえばサイエ先生をぶん殴って殺したら、何日かしてから同じようにして殺される。だから、タイザイニンは、別にガマンとかするヒツヨーはないけど、自分が殺されるのはイヤだから、他のタイザイニンとケンカしない。そんな感じ。


「……あ、じゃあ、今日はコーヒー飲めないな」


 それと、何となくほしいなってのは出てくるけど、ゼッタイにほしいなってのは出てこない。だからオレは毎朝サイエ先生にコーヒーをおねがいしに行く。他のモージャ……えぇと、たしか、いなくなったもの、って書くんだっけ……そう、タイザイニンほどではないけど、悪いことをしてここにいるヤツらにおねがいしようとしても、アイツら、オレを見ただけでどっかにかくれてしまうから。

 ちょっとくらいオレのほしいものになってくれたからって、そんなに怖がらなくていいのに。たしかにヤってんのがオッサンだったって気づいた時に吐いたけど、おこったりはしてないし、ヒトトキのユメを見せてくれたってトコについてはカンシャしてるのに。

 モージャはあんまり役に立たない。モージャのロリっ娘がジゴクに来てくれたらダイカンゲーするってのに、ほんとうにほしいものはジゴクでは手に入らない。あぁ、小さくて、よわくて、手足ちぎったらガクガクゆれて、ぎゅって中がしまる、生きてた時には何回も楽しんだ、あの感じをもう一度感じたい。


「どーしよ、どーしよ。ヤードとあそぶかなー」


 アイツがオンナノコならよかったのに、何日か前にジゴクに来たグンジンサン。キンパツで、目が青くて、白くて、小さくて、でもよわくないしナイフ一本でモージャ百人土の下、って感じの。そんなんでもオレと話してたら頭ぽんぽんしてくれるからちょっと楽しい。マジで何でアイツ、ロリっ娘じゃないんだろ。

 カミを伸ばして、ツインテールにして。片方の目はホルマリンのビンに入れたらきっときれいなままだ。足だけ残して、いや、足はちぎって手だけ残そう。指と指をつなげて、首にひっかけて、オクの方まで突き上げて、泣き叫ぶのを正面から見ながら、きっととても楽しい。

 あぁ、でも、どれだけモーソーしてもアイツはオトコだ。そのジテンでありえない。ジゴクはケーサツとかいないけど、やっぱりあんまり楽しくないバショだ。ちょっとだけ楽しくて、でもとても楽しくなくて。そうだ、サイエ先生が生き返ったらサイエ先生を殺したヤツを追っかけるのを手伝って、もう一回ロリっ娘カッコカリを作ってもらおう。今度は元に戻った時ひどい目にあわないように、元に戻る前にチリになっちゃうようなセッテーとかにしてもらえないかな。











――殺人鬼、××=××。連続幼女強姦殺人の罪により死刑となった1×歳男性。その手口は残忍かつ凄惨であり、また当人は逮捕された後も一切反省の様子を見せなかったと言う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る