第14話

 恋人繋ぎじゃ無いとは言え…こいつは抵抗無いのかね、本当に。

 紗衣子と一緒に駅まで歩く…いや俺は照れるわやっぱ。

 他の事考えるか…電車乗るの久々だなー、乗り方覚えてるかな?

 そういや、なんでテレパシーだって分かったんだろう。


「理由は知らないわ、起きた時になんとなく判ったの」

「テレパシーだって事が?」

「そうよ」


 二回目だってのに色々慣れたな。

 いや、能力自体も明らかに今までの微妙な超能力とは違うし。

 もしかして、こういう念話系統の超能力のが得意分野なのか?

 念力がPKで、念話はESPだっけか…まあ注意した方がいいかもしれないな。

 もっとも、今日はこの前みたいに倒れる心配はいらない。

 会話のON・OFFは出来る様になったらしいので。

 つながる条件が相変わらず分からないので、俺が手繋いでる必要はあるし…あるんだろうか?


「これ、本当に俺が手繋ぐ必要あるのか?」

「あるのよ」


 あるのぉ? あるのかもなぁ…。

 まあ、紗衣子が勉強教えてくれたお陰で赤点も回避出来たし、快く協力すべきだよなー。

 …俺もただ手を繋ぎたいダケとか、やましい事はない、ないってば。

 そうだ、今日の買い物にあらかじめ俺を呼んだのも、超能力をごまかしたりする協力者が欲しかったからか。


「もしかして、あらかじめこういう事態を予想して、買い物に俺を呼んでおいた訳か?」

「…そういう事よ!」


 まあそうだよな…なんかわざとらしい感じしたが、気のせいだろうか。

 気のせいか。


「わりと離れたショッピングセンター選んだのも、知り合いに超能力を見られない為か?」


 手繋ぎ見られて俺たち仲を勘繰られるのも面倒だしな。

 そういうのも有るんだろ。


「うん? それはあたしが行きたかったからよ??」


 …だったら近場でいいだろ、わざわざ足伸ばして。

 まあ、どっちにしろ知り合いに見られたら面倒な事にはなるから都合は良いがな。

 面倒事…やっぱカップルに見えんのかな? いや俺は気にしてないけど?

 ぜんっぜん意識してねーし…って今心読まれてないだろうな。

 なんか物凄いスケベな妄想して反応を伺うか?


「…審、また変な事考えてるでしょ」

「…お前やはり心を読んでるのか?」

「あんたがえっちな事とか考えてるとね、突然真顔になるから分かるのよ」

「え? まじで!?」


 結構ちゃんと取り繕ってるつもりだったが…。

 おい、呆れた視線を俺に向けるな。

 ああ、ちょっと手汗が…。


「最初にテレパシーで繋がった時に観察して、大体こんな事考えてる時はこんな表情だなってね…。

 あんた前髪ウザくて顔よく分からないから、あたししか分からないと思うわよ」

「…うっせ、俺の髪型をウザいとか言うな」


 …やっぱ、前髪少し切るかな。



 ◇



「結構混んでるわね」

「うわぁ…ここ入るのか、面倒くせぇ…」


 土曜日だからな、親子連れやカップルが程々に居るなー。


「ほら、審もちゃんと手繋いで!」

「お、おおう…分かってる」


 迷子になりやすいお子さんみたいな扱いを。

 しかし最近の俺、主導権握られっぱなしなきがする…。

 つか、これ回りからは絶対カップルだと思われてんぞ…視線が生暖かい。


「…なあ、今クラスの連中に会ったらさ、どう言い訳すんだ?」


 いやね、ほんっと全然意識はしてないけど?

 間違いなく、いらん誤解されるし?

 そういうの、お互い色々と面倒じゃない?


「クラスの子達は普段こっちまで来ないし、みんなうちの学校から近い方のショッピングセンター行くって話してたから大丈夫よ」


 リサーチ済みか、なんだこの抜かりなさ。

 まあ、とりあえずさっさと手繋ぐか…モタモタしてると照れてると勘違いされるし。

 いや、照れてねーし。


 しかし…やっぱ、こいつの手やわらかいなー。


「…本当に、手繋いでも勝手にONにはならないのか?」

「あたしからONにしなければ大丈夫よ」


 ん、なんか脳内に着信きた感じが。


(こんな風にね?)

(あー、分かったからもう切るぞ)

(なにその倦怠期カップルの通話みたいな言い方!)


 お前な、また倒れたらどうすんだよ全く。


「目の前に居るんだから普通に話せよ」

「あはは…それもそうね」


 なに舌だしてんねん、可愛い。

 しかし…手繋いで歩くと、めちゃ距離近くなるんだよな。

 顔が近いと色々発見がある、今まであんまり顔は見なかったし。

 紗衣子ってこんなにまつ毛長いのな…瞬きするたびにぱしぱし音しそう…っていつの間にこっち見てんだ!?


「おい、俺を覗き込むな、びっくりする」

「いや、最初にあたしを覗き込んだのは審じゃない」

「いやー、そのまつ毛”つけま”かなと思ってな」

「はぁ? 失礼ねあたしのは天然よ」


 ドヤ顔すんな、しっかし今日は機嫌良いのか…よく笑うな紗衣子は。

 けど、前もこんな事があったような…ああ、そうだ公園だ。


「そういやお前も、最初に公園で会った時に俺の顔覗き込んでたよな?」

「え? ああ…あれはね、ほら…顔が良く見えなかったから、確認したかったのよ。

 ちょっと…知ってる顔かなって、思ったし」

「まあクラスメイトだったしなー」

「そう、そうよ」


 あれから色々有った気がするな、そんなに昔じゃないハズなんだがな。

 まあ、今日は俺たちの息抜きも兼ねてるし。

 余計な事考えずに、たのしむかー。



 ◇



 なんか疲れた…女子の買い物がここまで体力使うもんだったとは。


「結構な荷物になったなぁ…」

「ホントそうね…ちょっと甘く見てたかも」

「…紗衣子は余計な物を買い過ぎたからじゃね?」


 なんで服やアクセ類まで買ってんだよ。


「しょうがないでしょ、カワイイのがあったんだし」

「…まあ、ハラへったしどっかで飯にしよう」

「じゃあ、お互いの荷物はまとめてロッカーに預けておかない?」

「うん、いいんじゃね」


 こういう所のフードコートは、色々な店入ってるな。

 俺は…ここのステーキライスにするか。

 紗衣子はパスタか、あいつらしい。

 終始手を繋ぎっぱなしの、俺達に向ける店員さんの目が微笑ましい…やめろ、そんな眼で俺を見るな。

 しょうがないだろ、ここも結構混んでるんだし。

 しかし、なんでこういう場所のテーブルは小さいのかね…二人掛けでも向かい合って座ると足があたりそう…。

 まあ…あんま意識しないようにしとこう、心読まれるかも知れんし。


 俺の手元にはガーリックステーキライス、紗衣子はキャベツやレッドピーマンとか色々カラフルな野菜の入ったパスタをくるくる巻き取ってる。


「いつも思うが、色彩豊か過ぎんだよお前の食卓は」

「あんたも女の子と一緒なのに、ガーリックは無いわよ」

「男ってのはな、米と肉を食えないと生きていけないんだよ」

「だったら同じように野菜も食べなさいよ」


 野菜が嫌いじゃなくて、そのカラフルさが駄目だって言ってんだよ。


「紗衣子、お前は”肉・米・ニンニク”の組み合わせの偉大さを分かってないな」

「審こそ、野菜苦手だからって色合いだけで文句言ってるじゃない」

「なんだとぉ…だったら食ってみろ」

「イヤよ、ニンニク臭くなるじゃない。

 大体デー…デリカシーが無いのよ、出かけ先で女の子の前で食べる物じゃないでしょ」


 まあデリカシーが無いと言われると、全くそのとおりと開き直るしかないけどな。


「そ、それよりもよ。折角普段は来ないお店まで足伸ばしたんだし…もうちょっと色々見ていきましょう!」


 おう、なんかやる気みなぎってんな紗衣子さん。

 まあ、こっちも色々世話になったし、その位はお安い御用だ。

 

「今日は家に母さんも居るし、割とマジで時間に余裕あるからオッケーだ」

「やった! あたし結構見て回りたい店あるのよね!」

「…いいけど紗衣子は買い物長いからな、それ全部回れんのか?」


 時間の余裕にも限度があるからな?


「それは審が早すぎるのよ…なんで売り場に入って30秒位で決めるのよ」

「そんなの、ネットで調べて大体欲しい物のデザインや機能は決めてるからだが」

「…つまらないヤツね、もっと二人でゆっくり回らないと、楽しくデート出来ないじゃない」

「別に俺は、お前が買い物してんの、眺めてるだけでたのし…やっぱりこれデートに入るの?」

「ふぇ? あ、ああ! ち、違うのデートっていうのは言葉のアヤで!!」

「なるほど分かった、言葉のアヤだ」

「そうそう! ああもうこれご飯食べたから頭ぽーっとしてたのね!」

「そうだなー、俺ちょっとコーヒー買ってくるわ」

「そ、そうね! あたしのもお願い!!」


 おし、乗り切った。

 俺が乗り切ったと言えば、そうなるんだよ。

 だからこっち見んな、オイ。

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