第13話
翌日の昼休み。
俺の席は教室後ろから二番目の、一番ベランダ側というかなり良い物件だ。
そんな俺のすぐ後ろ、教室で最高の良物件に座ってる長髪のイケメンに、昨日の話を持ち掛けた。
「俺は構わない」
「おお、マジか良かったさんきゅーな」
「ああ…宜しく頼む」
いつもの不愛想な表情、ただコイツはこれがデフォなので別に不機嫌って訳じゃない…と思う。
あ、このロン毛の名前は”
俺のイメージで表すと、公家顔のイケメンミュージシャンって感じかな。
ライブハウスよりも、神社みたいな場所で雅楽やってる方が似合うなー、と個人的には思うが。
でも、読んでるのはエグい洋楽の雑誌だ。英語? いやさっぱり読めん。
んで、いつも片手にギターやってる人が使うトレーニンググリップ握って指カチャカチャ鳴らしてる。うるさいし、ちょっと指の動きがおかしい。
正直サクとはあんま会話は無いが、こいつ基本しゃべらん。
まあ話してるクラスメイトの存在が稀なので、結局はクラスじゃ俺が一番会話してると思う。
いや、俺も自分でサクと本当に友達なのか、少し不安ではあるんだが…もう班に誘っちゃったし? いいよね?
つか、マジイケメンなーこの公家。ついでに髪の毛さらさら。
男女込みでクラスで一番長くて美しい髪を持ってる、うん。
実際に、見た目だけなら創作物の陰陽師みたいな男だし。
正直こいつに似合うのは黒髪ロング一択だな。
ただ、楽器はギターじゃなくて
「…それで、もう一人は誰だ?」
「ああ、それはヒデを誘った」
俺の小学校時代からの同級生。
まあ、ぶっちゃけると幼馴染だ。
「ヒデなら大丈夫だろ?」
「ああ」
ヒデは俺の前の席だ、あいつもある意味他人からの干渉をシャットアウトする性格なので、そのへんサクとシンパシー通じるのかもしれん、知らんが。
お、紗衣子がこっちに来る…?
「審、リュック持って無いって言ってたわよね」
「…そういやそうだ」
すっかり忘れてた、いや中学時代のは有るかもしれないがデザインが痛いし。
流石にアレは使えないなー。
「あたしも無いのよ、次の休みに一緒に買いに行くわよ」
「おう、分かった」
丁度いいな、俺だけだと最近のファッションセンスなんて分からんし。
一応、サクが同じ班になることを話すと、当日よろしくねと挨拶した紗衣子は又自分の席に戻って行った。
「…お前達、付き合ってるのか?」
「は? いやいや、全然ちげーし!」
色々あって友達? になったダケだ。
もう、この子は本当に、もう。
「…お前が女子に名前呼びするのも、されるのも…初めて聞く」
「え? あー…そう、かも?」
そういやそうだ。
やば、テレパシーの一件か…あれから距離感かおかしくなってる。
「気軽にデートの約束をしていた」
「ち、ちが! 別にデートとかじゃねーしっ!」
この薄眉陰陽師はホントなにを言ってんだか。
「…隠したいなら…少し気を付けろ」
なんか呆れてる? その表情は初めてみたな。
「お、おう…悪い、助かる」
「ああ…気にするな」
気遣いつつ、必要以上は踏み込まない。こういう距離感で付き合える友人は貴重だ。
出来れば、長く友達で居て欲しいもんだな。
◇
待ち合わせとかは特にしてない。
紗衣子が俺の家に来てくれる事になってる。
俺の服装は着慣れた学校指定の制服だ。
まあサクに言われて意識してるわけじゃないが、別にデートじゃないし。
最初ジャージで行こうとしたら、全部洗濯されてた。天気いいからなー。
とにかく、遠足で使う物を買いにいく訳だから、これも学業の一部だ。
別に制服でも問題ないだろう。母さんもおかしくないって言ってたし。
俺には浮ついた気持ちは無いからな、その為の意思表示だ。
遊びに行くんじゃないんだよ、まったく。
「審、来たわよ!」
「お前、制服じゃねえか」
なんでだよ。
「あんたも制服じゃないの」
「いや、そうだが…」
何も言って無いのに、何でこっちに合わせてきてんの?
「学校行事の一部なんだから、制服は当然よね?」
「そうなんだが…え? なんで俺の考えが? お前エスパー??」
「そうよ」
そうだったなぁ! オイィ!!
「いつ俺の心を読んだんだよ」
「読んでないけど、もう審の考えそうな事なんて予想つくわよ」
まじかー! なんでだ…。
「くふふ! 本当言うとね、
「ああーーー!! 女子SNS網ーーー!!!」
だから、そのドラ〇もんみたいな笑い方はなんだよ。
いや、確かに母さんに休日の買い物の事とか話したけどさぁ。
何してんの母さん…そんでいつの間に紗衣子とアドレス交換してんのさ…。
「学校で審が何してたのかを中心に話してたんだけど、『あき君たら天邪鬼な所あるから、当日はデートだって思われたくなくて、わざと外した服装で行くと思うわよー』って言ってたのよ。
だから、こっそり情報を流して貰ってたってわけよ!
つまりあんたの情報は、最初からこっちに筒抜けだったってわけよ!!
本当にざまぁないわね!! アッハッハ!!」
話しながら興が乗ったのか、段々悪役みたいになってきてんぞ。
このヤロウ、勝ち誇った様にネタばらしやがって。
え、いや、しかし。
「母さんが、俺を裏切った…?」
家族にスパイがいたなんて。
つか、紗衣子も母さんに俺の学校生活を報告してんのか。
母さんは過保護な所あるからな、きっと心配なんだろう。
司に対してもだけど、ちょっと親バカ入ってるし…いい加減子離れして欲しいもんだ。
「最初ジャージで出かけようとしてたけど、何とか学生服まで引っ張り上げたって言ってたわ」
「だからジャージが全部洗濯されてたのか…」
「洗濯大変だったって言ってたわ、あんたね…あんまりお母さんに迷惑かけるんじゃないわよ」
「あ、ごめんなさい」
自覚はある、すまん。
つか、なんで母さんはそこまで紗衣子に肩入れしてんのさ。
「えっと、じゃあ手出して?」
「え、いや何で…?」
そういや今日は何の日だ? 水でも電気でもなさそうだが。
ん、髪の毛留めてるアクセに見覚えが無いな…何だ? スマホの電波状態みたいだな、そんなの売ってるのか。
あー、もしかして?
「ごめん、今日”テレパシーの日”になっちゃった。
間違えて他の人に触ると電波立つかもだし、手を、ね…握っててもらえる?」
ええぇぇぇ…マジですか…。
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