第10話

「に、に、にーちゃんが!! お、お、女の子つれこんでるーーー!!!」

「キャァァァーーー!!! なにこの子かわいいーーー!!!」

「あー、どっちも静かにな」


 現在発生中のイベント、遊びに行ってた弟が帰ってきた。


 おい、二人とも静まれご近所に迷惑だ。

 まあ、つかさがかわいいのは事実だ、うん。

 誰だって紗衣子みたいになる、しょうがないなハハハ。


「紗衣子、その可愛いのは俺の弟で”つかさ”、小学5年生だ。

 んで司よ、この騒がしいのは俺の家庭教師で紗衣子な」

「まじかよにーちゃん! カテキョってあれだろ! なんかえっちぃヤツ!!」

「え、エッチくないわよ! ちょっとアンタ弟になんて事吹き込んでんのよ!!!」

「はははそうだな、司はかしこいなー」

「エヘヘ♪」

「あたしのはなしを聞けーーー!!」


 全く、本当にうるさいやつだな。


「司はまだ小学生なんだ、夢を壊すような事は言うなよ」

「それは夢じゃなくて欲望よ!!」


 騒がしいな、そのくらいわかってるからな?


「ねーちゃん、ねーちゃん、じょうだんだぞ?」

「紗衣子、小学生でも流石にそのくらいの分別は付くぞ?」

「ああもう!! この兄弟!!! もう!!!」


 おいお、あまり息を荒げるな、病み上がりだろ?

 ああほら、興奮したら放電するだろうが。


「いてっ! にーちゃんいまぱちってなった!」

「俺もなったな、ただの静電気だ。

 この程度で動じては、俺の様に立派な男になれないぞー」

「まじかよにーちゃんすげー!」

「あんたいっつも静電気にビビリまくってるじゃない」


 そのくらいは大目に見ろよ。結構痛いんだよ。


「へー、でも小学5年生かーへー。

 本当にカワイイわねーふふふ」

「は!? か、かわいくねーし! ぜんっぜんかわいくねーし!!

 カッコイイって言えよな!! ほっぺたさわんな!!」

「きゃーカワイイ!! ぷにぷにっ!!」


 司は母さん似だからな。

 メチャカワなのは間違いない、髪の毛さらっさらだし。

 俺が言うのも何だが将来は王子様、いや天使系イケメンになるだろう、まだ背とかちっさいが。

 さすが俺の弟だなはっはっは。


「そうだ! にーちゃんハラへったぜ!」

「ああ、すぐ出来るから司は手洗いうがいしろよ」

「まかせろー!」


 元気よく走り出す司、転ぶなよー。


 んじゃ、司が戻ってくる前に、ささっと作るか。


「あたしも何か手伝うわよ!」

「いや、キャベツも切ってあるし、あと肉焼くだけだからいいよ」

「え、そんな…」


 残念そうな顔すんな、お前は後で満足いくまでカレー作ってもらうから。

 あー、わかったから、もういじけるな。


「じゃあご飯よそって?」

「今出したら食べる時に冷めるでしょ」


 ああもう、面倒だなー。


「さいこねーちゃん! にーちゃんの学校のはなしきかせてくれよな!!」


 うむ、司よナイスタイミングだ。


「そんな訳だから、少し弟の相手してくれるか?」

「ふふ、しょうがないわね!」


 よかった静かになった。

 まあでも、こういう賑やかさはキライじゃないがな。



 ◇



「やっぱ、にーちゃんがやいたブタはさいこうだなー!」

「司、豚肉の生姜焼きなー」

「茶色と緑しか無いのが気に食わないけど…」

「赤が欲しいならトマトに塩ふってかじってろよ」


 野菜はキャベツとブロッコリーで十分だろ。

 いろどりとか気にすんな。


「でも、料理が手早いわね…意外だけど、審ってホントに料理慣れしてるわね。少しかたよってるけど」

「さっさと終わらせないとゲーム出来ないからだな」

「そんな理由だと思ったわよ」


 そうだよ、そんなもんだろ。

 あと、毎日やってると慣れるし。


「後は勉強前に紗衣子のカレー仕込むか」

「洗い物やるわよ」

「まじかよ! ねーちゃんさんきゅーな!」


 司と紗衣子は割と早く馴染んだな。

 何かコソコソ話してたみたいだか…紗衣子のやつ俺について変な事吹き込んでないよな?


「司は午後はどっか遊びにいくのか?」

「おれ家のそうじやるし! にーちゃんのてつだいだー!」

「司くん本当良い子ねー、おにーちゃんは何で間違えたのかしら…」


 何を言うか、俺の弟だからこそだぞ。


「とりあえず片付いたわよ。

 午後も勉強しないとだし、さっさとカレー作っちゃいましょ!」

「おー! ねーちゃん気合いはいってんなー!」

「空回りしなきゃいいがなー」

「審ったらもう…何か言ったか・し・ら?」


 おっと、紗衣子さん正体隠して、正体。

 あと、今指先にパチパチが集中してなかった?

そんな事で能力を進化させんな。


「んで、何か手伝える事は?」

「ないわね、分量はどの位にしようかしら」

「材料は冷蔵庫のヤツいくらでも使っていいから、司の為に具だくさんにしてくれ」

「育ち盛りだものね、そういうことなら遠慮しないで使わせて貰うわね。

 まあ、又豚肉使ったカレーになるから昼夕で豚が続いちゃうけど」

「さいこねーちゃん、ぶた肉はうまいから何回でもだいじょうぶだぜ!」

「司は、豚肉食わせとけば大体は満足するから」


 1週間オール豚肉でも大丈夫だ。


「まあ子供だものね」

「げんえきじぇーけーの手りょうりたのしみだなにーちゃん!」

「…ちょっと、審?」

「冗談だぞ、紗衣子」

「じょうだんだぞ、ねーちゃん!」


 だから本気でこっち睨むなって、まじで。

 兄弟だし、多少影響でるのは仕方ないだろうが。


「冗談でも、ああいうセリフが出てくるのが問題って言ってんのよ」

「そうは言っても、全て俺の影響って訳じゃないしな」

「ねーちゃんのころとは、もうじだいがちがうんだよー?」

「ウソよね、あたしらと5年しか違わないじゃないの…」


 5年も経てばそんなもんだよ。


「俺も、たまーに年代の差を感じるな」

「オジサンみたいな事いわないでよ」

「なーなーカレーまだかー?」

「これは夕飯だからな?」


 手伝おうかと思ったが、どうも一人でやりたがるな紗衣子。

 まあ、俺は部屋の掃除でもしてくるか。



 ◇



「出来たわよ!!」

「出来たな」

「おーうまそう!」


 うん、良い香り。

 特別あれって訳じゃないが、ふつーに美味そうなカレーだ。

 何かやらかすんじゃないかと期待してたが、ふつーに出来たな。

 ルーも市販のだし、多分普通のカレーだ。


「ちょっと味見させて貰っていいか?」

「あー! にーちゃんずるいおれも!」

「本当はもうちょっと時間置いてからの方が美味しいんだけど、まあいいわよ」


 小皿にカレーだけ取り分ける。

 ご飯少し残して置けばよかったな。


「うんうん、なかなか美味…い?」

「カレーうまいな! 兄ちゃ…ん?」

「ねえ、なんで疑問形になってるのよ…」


 いや、なんだ? うまいっちゃ美味いんだが。


「なんか、時々ゴーヤみたいな味するんだが?」

「うん、にがうりだーこれ」

「あたしゴーヤなんて入れてないわよ」


 んじゃ、何の味だこれは。


「なあ紗衣子さんや、使った材料教えてもらえんかの?」

「いいけど…、まず豚肉、人参、玉ねぎはみじん切りにして」

「ほうほう、そんで?」

「じゃがいも、ユポゥポテマラグァ、ココナッツミル――」

「ストーーーップ!!!」


 今、なんか聞きなれない単語あったぞ。

 お前な、ココナッツと並べればバレないとでも思ったか。


「なによ、ココナッツミルクは隠し味程度にしか入れてないわよ?」

「そこじゃねえ、もう一個前だ」

「ああ、カレーにじゃがいも入れない派?」

「2個前に戻ってんぞ」


 こいつ、ワザとじゃねーよな?


「もしかして、南タゥポタポルィ共和国原産の野菜、ユポゥポテマラグァの事?」

「どう考えてもソレしかねえだろ!!」


 なんだその、ラノベのとって付けた設定みたいな名称は。

 国名もわかんねーし、そもそも野菜の紹介すんのに共和国名からっておかしいだろ。


「ゆ、ゆ、うゆ、ゆぽっ??」

「お前みろ、司の舌が回らなくて…何か可愛い事になっちまってるだろうがハハハ」

「やだマジかわいい!」

「に、にーちゃんまで…ふたりともー! かわいいとかゆーなよーもう!」


 時々、司が可愛すぎて、何か病気にかかってしまったのかも? と心配に思うわ。

 だって普通ここまで可愛くないだろ?

 お医者さーん!! うちの弟が可愛すぎるので、すぐに診察してもらえませんかねー!!はやーく!!!


「審、またバカな事考えてる顔してるわよ」

「え、まじ? なんで分かるの?」

「さいこねーちゃん! にーちゃんはカッコイイんだぞ!!」


 ありがとう可愛い弟よ。

 おっと、それよりゴーヤ味の検証をせねばな。

 カレーをよーく見てみると、何か黄色っぽい正体不明なヤツが入ってるなーそうそうこの味だ。

 …いや、なんだこれ?


「それ入れるとカレーの味に深みがでるって、ネットの動画で見たから入れてみたの」

「お前はネットのバズりレシピを、確認もせず我が家で試したのか」


 油断できねー女だな。

 いや、そもそもこの野菜どこから仕入れた? 絶対スーパーに売ってないだろ。


「なあ、この謎野菜の現物まだ有るか?」

「何よ、謎って…全部つかっちゃったわよ」


 まじか、野菜のヘタとかは…残ってないな。

 あとでネットで調べるかなー。

 いや、まずは実在する国か調べないと。


 ちょっと色々と衝撃だったが、カレー自体は普通に食える出来だしな。


「うん、美味いし大丈夫だろ?、正直そこまで気にならんか、な?」

「ねーちゃん、カレーおいしい、よ?」

「だからなんでちょっと疑問形なのよー!!」


 ホント、超能力だけじゃなく料理の腕まで微妙だとか、思ってないっすよ?

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