04 Love,
「来たか」
カメラマンさん。携帯端末を、かまえている。
「いつでもどうぞ」
かんどりさんに、言われた。
知っている側が、引き戻してあげないと。彼は、夢と幻想から戻れなくなる。
私が。
彼を現実に、引き留めなければならない。
かんどりさん。カメラマンさんの腰に、くっついている。
「こんなふうにっ」
やりかたの分からない私に。教えてくれている。
「これから撮るんだ。あまり俺を動かすなよ。俺の不死鳥」
「神の鳥ですから。神シャッターチャンスを演出してきました」
彼。
涅槃の真ん中で。
座り込んでいる。
そこに向かって。
歩いていく。
周りには、感覚をおいて、添えられたいくつもの華。
「まだ。まだです。まだ撮っちゃだめ」
「もういいと思うんだが」
「だめです。神の鳥にしたがいなさい」
「不死鳥のおおせのままに」
彼。
座り込んで、何か、心を落ち着けようとしている。
「
彼の、本名を呼んだ。
「その名で呼ぶな」
拒絶させる。
「あなたの名前は。先他川です」
先他が苗字で、川が名前。
「やめろ。涅槃が逃げる」
「いいんです。もう。むりしなくて」
「何がだ。俺には、これしかない。これを。涅槃を追うしか。俺には生きる価値がない。目的がこれしか」
「いいえ」
座り込む背中に、手を当てる。
「あなたは私に、生きる意味をくれました。だから私も、あなたに生きる意味をあげます。こんな涅槃ではなく、もっと綺麗で、美しいものを」
服を脱ぐ、その、ほんの一瞬前。
携帯端末の、間延びしたシャッター音。
「はいどうぞ。撮りましたんで。あとはごゆっくり」
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