58.私たちはリテラチュア
「全然、連絡くださらないんだもの。心配しちゃった」
見知らぬ男子高校生に、そんなことを言われました。お取り寄せのお客様に、ご連絡を忘れたかしら。そう思ってしまった自分が情けのうございます。
一足遅れて来店なさった老婦人の姿を見て、やっと気付きました。
ミロク少年です。
とある平日の夕刻に店舗に現れた姿は美少年で、あの三つ編みが鬼のように
ライヴハウスの照明の中で、彼は美少女でした。
一点の
「アタシの男の子の姿、そんなに興味深い?」
じっと
「
老婦人に憧れつつ、老婦人と接する機会の少ない私。
少年と老婦人の姿が
私の祖父母は既に他界していました。一緒に暮らす日々は無く、お年玉をくれる人という印象しかありません。けれど、優しい
おじいちゃん、おばあちゃんという人が生きているあいだに、もっと会話しておけば良かったと最近、とみに残念に思います。
少年少女から両親という道を通って祖父母に成った過程。
そのサイクルを理解して受け入れるヒントを、誰かに教えて欲しかった。
けれど、それは教えられるものではないでしょう。
成長する過程で悟るべき領域です。
私は成長途上の
もし、私が母親に成ったら。
月彦にするみたいに添い寝して、
そして、老婦人に感じた後光を、母で在る自分に感じるのかもしれませんね。
「おばあちゃまと
「どんな会話?」
私たちは晩餐の席で、白いごはんと青魚、みぞれに卵焼きを食べながら話していました。月彦は
「真っ白で美しかったであろう
老婦人が
月彦は、やたら難しい三島文学と、昭和三十年代に書かれたとは思えない
「
「三島由紀夫は正常です。彼を異常と
三島由紀夫と森茉莉の関係性は、ミロクと祖母の関係性に似ています。
「私たちを異常だと
そう言える強さを
生きるための栄養を摂ることを恐れず、すなわち生きることを怖がらず、
私たちは生きていきたい。
人生を楽しみたいものですね。
「
私はカウンセリングに通っていました。
「月彦くんと、ごはんを食べながら、どんな話をするんだろう?」
青魚の腹を引き裂きながら、三島由紀夫の割腹自殺を語り合ったエピソードを披露してみました。最近の私は何でも、よく食べて、よく話すのです。
健康そのもの。これを真に健康な状態と言うのですね。二十六歳にして、初めて知りました。
「先生。
「僕にとっては同じようなものだけどね。そうだ。キミたちの
月彦と私をモチーフに、医学論文を創作されたいもよう。
光栄と喜ぶべきでしょうか。恥さらしではないですか。
「
基本的ですが、厭なことは厭と言えるようになりました。
「それは
私は承諾しました。月彦も後日、同じことを
数ヶ月後、園田医師が執筆した
園田医師が
論文には、私の知り得なかった月彦の姿と、我を失い自分を客観視することの
真実を最後に、この物語を締め
♪ミレミレミシレドラ♪
私たちは幸せな少年少女なのです。
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