45.編み込まれる愛
「ねぇ、
「月彦くんの思いどおりに、どうぞ」
美容師並みに腕とセンスが良い月彦に任せました。彼は自分の髪も自分で
「日芽子さんの髪、綺麗だよ。髪だけじゃなくて顔も綺麗だ。さすが昔の女優さんと言われた
昨年の出来事を回想して笑う月彦は、あっというまに
「あのころの店長は月彦くんのこと、ヴィジュアル系バンドマン志望の若者と言っていたわ。不思議ね。少し前のことなのに、凄く昔のことみたい。月彦くんの髪だって綺麗よ。真っ直ぐで
「
そうでした。
「美人。お嬢さん。お姉さん。そんなの
「美少女は?」
「少女だろう? 女性よりは少しマシな気がしないでもない。けれど、やっぱり
「じゃあ、美少年は?」
「美しい少年だものね。おこがましいほどの褒め言葉さ。完成だよ。疲れたでしょう? お出掛け直前まで寝ていよう」
月彦はシザーズセットを片付けて、電気毛布の余熱の残る布団に潜り込みました。
「おいでよ」
私は
「ちょっとぐらい乱れても、ボンネットで隠せるから平気さ。おいでよ」
月彦の隣に潜り込みました。時刻は十六時です。明かり取りの小窓からは春を思わせる
私たちは布団という完全に安心できる場所に寄り添い、
彼の声は子守唄を歌うトーン。私が
「実はね、日芽子さんの入院に、お付き合いしていたころから、僕は着実に体重を増やして、今では四十二キロなんだ。これは運動不足に
私の勤務時間中、気紛れに店舗に立ち寄っては、風に吹かれれば飛んで行きそうな
「入院させられて、三キロも肥らされちゃった」と、不満気に
そんな彼が約一年を経て、自らの心がけで体重を増やしたと言うのです。実際には良い栄養が行き渡り始めて、電解質異常が改善されて、
「あのころは人生を
月彦の言葉が今、私の栄養に成ると信じられるのです。
この布団の中は完全栄養食品と呼ばれる卵のようで、生きていくために必要な必須アミノ酸が着実に私たちを充たすのです。
「もう少し体重が増えたら、社会に出て働いてみたい。アルバイトから始めるのさ。でも、その重みを引き受けるってことは、女性としての生理的機能と、オトナとしての責任を引き受けるってことでもある。拒食という手段でもたらされた栄養失調は、
横たわった姿勢で
でも、月彦には伝わりました。
「ありがとう」
「こちらこそ」
「これからも」
「よろしくね」
やがて
私たちはフルに充電した身体に、とっておきの衣裳を
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