42.心は一進一退
退院前の夜明けから一転、退院後の心は夜更けのように暗い。
何故かしら。自分を取り戻して生き始めたはず。
これが心の難しさ。手に負えない人間の難しさです。
百合柄の
「お久し振りです。
「……はい」
「
「お陰様で退院しまして……元気です」
社交辞令。
自分で感じる自分の雰囲気は、元気とは程遠いのですが、そもそも真実に元気とは、どういう状態を示すのでしょう。何を
「突然なんだけどさ、店舗、業績不振で畳むことになったんだ。上層部の指示でね、閉店セールの最中だよ」
ファーマシーの末端店舗です。業績不振の空気には、異様なまでの人件費削減を実施していたころから勘づいていましたので、それほど驚きません。
「
それは私が会社都合でよろしく動く人間であり、低時給に文句も言わず勤め続けるバイトーハン
「店舗が無くなって、すべて終わりじゃ淋しいよね。オレは社員だから、別の店舗という受け皿がある。その受け皿をアルバイトの登録販売者にも拡大しろと言った人が居てね。
瑞月先輩。私の人生に、そういう人も居ましたね。ダブルループではなく、ダブルワークの女神。気持ちも身体も強靭で健全な、おそらく真に健康なキャリアウーマンです。
「オレと瑞月さんは
ありがたい案件のはずですが、
「店長、
「もういいって……」
「もういいんです」
繰り返しました。本当に、すべてが、もう面倒なのです。
「
通話を終えた途端、脱力感に
正直、このままでは社会人としていけないと思いつつ、社会復帰を前に足が
私には、月彦と共に
ふたりして治ることを足踏みしているような状況を焦らせることもなく、
もし、舘林家に不在の父が帰って来られたら、私は
月彦の寝床を占領して思い悩んでいました。月彦に着付けてもらった
「ただいま」
「おかえりなさい。お夕食は?」
「一時間後に、お願い。ちょっと、やりたいことがあるんだ」
夕方、病院から帰った月彦と、お母様の遣り取りが聴こえました。
百合柄の
「おかえりなさいませ、月彦くん」
「日芽子さん、ただいま。
月彦は
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