第16話懐古のアルバムが開く道筋

…ねぇねぇ、式神ごっこをもう一回!

今となっては遠い記憶の中の情景。そしてこの力を授かったときの光景は今でも鮮明に覚えていた。

そして、それはまだ自分の持つ幻想や偶像を自在に具現化できて、周りの世界が無限大の可能性を感じさせてくれた頃のことだ。

小夜子は今では思い出すのも恥ずかしくなるほどの出来の形代で皆を驚かせるのが何よりも楽しかった事を思い出す。

その頃の自分は自らに備わった素質や才能の希少さなどに何の興味も無かった。

ただできることが楽しいことに繋がるのを無邪気に喜んでいた。

そして伝説や逸話の主人公や登場人物の真似をして大冒険活劇の模倣に浸って一日中友人たちと夢中の日々を過ごしていた…それはただの懐かしい思い出の1ページではなく、いつまでも続くと思っていた日常の在り方だった。

そんな夢のような日々の中のあるひととき、それは姿を現した。

物語の中に出てくるような異形の姿をしたひとつの「人影」。

その禍々しい姿をしたそれは歪でありながらも神々しい空気をその身にまとい、こちらを微笑ましげに見ていた。

小夜子はそのとき初めて本能的な恐怖というものを抱いた…そして自らの不出来な形代を握り締めて心を落ち着かせようとしたが、心のざわめきは収まってくれない。

その様子を和やかな表情で見ていた「人影」はさらににこりとして顔をほころばせた…気がした。

次の瞬間、小夜子の認識する世界は膨大な情報量の色に塗りつぶされ、意識は途切れた。後のことは覚えていない。

そしてその時の記憶が神域入りの条件を満たしていたことに小夜子はいまだ気がつけずにいた。

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