第13話神域の庭の冒涜者達

天界からだけでなく宇宙からも「天使軍」による侵略が…?ふん、馬鹿馬鹿しい。

ルーベラはそう毒づくと担当地域の司祭を下がらせることにする。もはやこれ以上受け取るべき情報はないだろう。絶句して動けない司祭から視線を外して傍仕えの侍従に合図する…

そして精緻な装丁の燭台に灯された炎が怪しげに揺らめくと、豪奢な扉が開き衛兵が大挙して現れる。

突然の事態に驚いたのはこの空気の中取り残された「提言者」だけであった。

衛兵に両脇に抱えられてこの場から引きずり出されていく彼は尚も現状の危機を訴えるべく口を動かそうとするが、その口からは空気しか漏れてこない。

まあ仮に言葉を発することができたとしてもルーベラを含む評議会の面々の耳に言葉が届くことがない事は明白なようだった。


そして議題は次々と審問にかけられていく。次の出番であった別の担当地域の司祭は先ほどの光景を目の当たりにして震え上がっており、問題点のアピールどころではないようだ。

その様子を見て評議員の一人は呆れたように肩をすくめ、ルーベラにこの場の処断の程を伺う。


「どうしますか?カバラの頂点にしてケテルを司るセフィラ、アイスフィールド猊下。」


ルーベラはそのおどけたようにも見える仕草に不快を覚えたが、それを感知していない風で言葉は続く。

「この者共はもはや自力で言葉を紡ぐ事も無理でありましょう。いっそ木偶にして頭の中を吐き出させますか?」


嗜虐的な言葉をわざわざ選んだ彼はルーベラが当然のごとく許可を出してくれることを疑いもせず、嬉々として彼女の指示を待った。

無論彼だけではなく、この議場そのものが眼前の哀れな子羊たちの処刑執行許可を待ち望むかのように感じられる…そうこの場には神聖な者の加護など最初から存在していない。

それでも司祭達はこの場の主たるルーベラにせめてもの慈悲をと涙ながらに懇願を試みる。


ルーベラはその様子を冷ややかな視線で射抜くと、この場での摂理構築を改めて見せ付けることにした。

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