第11話未開地への嘱望が生み出したモノ

穢れた大地を一掃する清めの炎…それは違う神話の話だったかな?

大して興味が無いような素振りで解説を続ける「開発者」は銃口を突きつけられながらも余裕を見せる。

この期に及んでまだラスボス気取りだろうか…その白々しさはこちらの許容限界をとうに超えている。

「能力者の生体反応をマーキングして精密ながらも膨大な熱量による広域殲滅が可能な画期的兵器」。

それが上層部にプレゼンされた売り文句だったらしい。

聞くほうも聞くほうだが、堂々とアピールポイントとしてそれを挙げられる死の商人が組織の中に出入りしていたことを疑いたい。斎木の方から何も異論は出なかったのか…それともスポンサーには抗えないとかで説得されたのか?どっちにしろ受け入れがたい事に違いは無い。

銃口が向けられていながらもそれが福音だと本気で思っているらしい「開発者」の最後の一人。

死後楽園に行ける事を確信しているのだろうか…それとも復活できると信じているかのような笑みは今も剥がれない。


死んだ後も意識、精神干渉系能力者に頭と心の中を探られることは説明するまでもない事実だというのを失念しているわけは無いはずだが。息詰まる空気が密度を増していく中、制圧部隊の面々は「開発者」の彼の余裕ぶりに猜疑心を掻き立てられ、「処分許可」を求めてくる。

しょうがないか…報告書の書き方が多少面倒になるがそれも2,3行の改変だけで済ますとしよう。

そう考えて右手を振り上げ指示を出そうとした刹那、視界にノイズが走る。

その数瞬後に私の網膜に映し出されたのはこの現実世界という地獄でもこの世ならざる楽園でも無かった。

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