第9話日々の日常がもたらす永遠

”ありふれた日常が何よりの恵みである”、か…なかなか興味がある議題である。

アイギナは永劫の日常を与えた自らの眷属を眺めてとりとめもない思考に沈んでいた。

そう永遠の時間という首輪に繋がれたかつての勇士達。今は何の願望も持たず意思を示す事もなく私と自分と同族を守ることだけが刻まれた人形のごとき存在たち。

かつてはいくらでも苦しみと嘆きを得たようだが、それも久遠の時の流れの中では大海の中のささやかな波に過ぎない。ある程度自らの抱える時間に打ちのめされれば自然と私に頭を下げて服従を願ってくる。

どんな伝説上の英傑たちでも同じこと…どこぞの魔術闘争は自我も感情も与えて使役するという。

大層な慈悲深さだと感心せざるを得ない。余程の神器の力が闘争自体を仕切っているのだろう。

今度ちょっと私も試してみようかな…

アイギナは戯れに自らの宝物庫のコレクションにある神器を取り寄せようとしたが、少し考えてそれをやめた。この前の女神顕現のときにコレクションを乱用しすぎて弾劾されそうになったばかりだ。

いや、大丈夫今回はもっとうまくやる。

いかにも現世で失敗するギャンブラーのような言葉を吐いてしまう…しかし。

でも英雄達の時代を超えたバトルか。やってみる価値はある。

そう、たかだか二千年や三千年程度で蓄積された摂理などまた組み上げてやればよろしい。

毎度の手前勝手な理論武装で自らの欲求の正当化を済ませたアイギナは、とりあえず自前の舞台のルール作りを模索し始めた。

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