第8話楽園と聖地の厳然たる境界
ん…件のお嬢様が進行中のプランの進捗がよろしくない?何でこちらにその報告が来る?
そっちの関係者に問い合わせてくれ。ああそうだそこのセクションの…
彼は慣れた手管で今回の事案を他の部署へ回した。その様子は丸投げというレベルのものですら無かったが、誰もそれに異論は唱えない。何故と問いかければ無論”「実績」と「信用」の成せるモノ”と答えてはばからない筈だ…関係者ならいつも目にしている光景である。
美咲はその様子を隣で見ていて今回の被害者に今日何回目かの同情を寄せていた。
その手にはカルーアミルク「風」のノンアルコールカクテル。いつもの時間を届けてくれる美咲のお気に入りだ。
そして滞在中の部屋のミニバーは彼女のビジネスパートナーが空にした後…代わりは当然自分で買いに行かせる。
メロンパンでもついでに買ってこさせよう。できればあの店のホイップクリーム入りのやつを。
そんな思惑に浸る深夜なのだが彼女は先ほど面白いネタをキャッチしていた。
なんでもこれまでの「異界」とは異なるタイプの魔術的テリトリーが都心一帯に張り巡らされているとのこと。
そこでは物理法則や時間の流れ、因果律も術者の思いのままのルールで動いているという。
締め上げた「関係者」が吐いた情報によれば世界の「摂理」がどうとかいう事だった。
いったい何だ…ガイア論でも下敷きにした異能を持つ能力者でもいるのか?
美咲はデバイスで共有されたテキストデータを読んでいく…ふむ魔術的な分野には明るくないが、どうやら望みどおりの因果プロセスを発生させる術式という所見らしい。
ふむ、なんとも面白い…ルールの書き換え合戦というならちょいと自信があるぞ。
美咲はまだ見ぬ「同族」との邂逅を夢想して一気にグラスを開けた。
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